「山月記」:李徴の声が残った理由

 8組と3組での授業。「山月記」の4時間目である。だが、予想以上に進度が遅れている。やっと第2段の前半まで行ったところだ。予定では内容の読解に6時間程度をかけるつもりだった。だが、既に4時間を費やし、未だに第2段が終わらない。ちょっと時間のかけすぎだなぁ。場面分けに思いの外時間がかかったのだね。
 どちらのクラスも、第1段の後半からスタートする。李徴が、生活苦と詩業への挫折から地方官吏になるところの心情を生徒につかませようとした。まずは李徴の生活苦の原因を確認させる。ある意味、彼が妻子を持ったことがその原因とも言える。詩業によって名を残そうとするなら、生活苦はある意味当たり前のことだ。自分勝手なことをするのだから。そのような彼がなぜ妻子を持っているのだろう。生徒に考えさせるのも無理かと思い、私の解釈を紹介する。典拠となる『人虎伝』では、李徴は皇族の子となっている。つまり、彼は由緒ある家柄の出である。だからこそ、進士に登台した時は「豊頬の美少年」だったのだし、数年間は職を持たずに詩業に専念することができたのだ。そうすれば、彼の結婚は家柄によるもの、つまり親の薦めによる家柄同士の結婚だった可能性が高い。李徴の妻もよい家柄の娘だったのではないか。彼の性格を考えると、とうてい彼の方から結婚を求めることは考えにくい。
 そんな彼が妻子を養うために節を屈して一地方官吏となる。その時の心情を生徒に答えさせた。「悔しさ」までは解答してくれたが、「無念さ」という言葉でまとめておいた。さらに、才能のない同輩の下命を拝さねばならぬ心情も、「悔しさ」までは出てきた。これも「屈辱」でまとめた。
 次に第2段にはいる。袁傪と再会するまでの李徴の生活を確認させる。「人食い虎」と言われていることを確認する。そして、袁傪が駅吏に止められたにも関わらずに出立した理由をとらえさせる。「供回りの多勢なこと」から、彼が高位の役人であり、社会的成功者であることをとらえさせる。また、「残月の光を頼りに」することができたことから、「月」が時間の経過を示すことを理解させる。このあたりで時間切れだった。
 できれば1時間に1段落分を進んでいきたい。ある程度スピードがなくてはね。