教員免許状更新講習2回目を台風が近づく中で行った

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 10月12日(土),後に甚大な被害をもたらした台風19号が近づく中,教員免許状更新講習が行われた.いやはや,確かに朝の時点では警報は出ておらず,講習中も特別警報までにはいかなかったものの,大変な天候の中で講習は実施された.受講してくださった皆様こそが大変だっただろう.本当にお疲れ様でした.

 そんな中,9月に行った講習とほぼ同じ内容で,今年の2回目の講習を行った.受講生は57名.本来は定員ギリギリの60名だったのだが,キャンセルや当日欠席があった.もう,こんな状況の中でも学ぼうとされる皆様に対して,講師としてできることはともかく「参加してよかった」と思えるような体験をしてもらえるよう尽力することだ.と同時に,せっかくの「更新」講習なのだから,単に自分の知っていることを伸長させるだけでなく,新しい知見を得てご自身の読み聞かせ観を新たにしてほしい,言ってみれば,「自分のOSをヴァージョン・アップしてほしい」という願いを持って講習を行った.単に自分の知っていることを伸長させるだけなら,言わばそれは「アプリのアップデート」に過ぎない.そして,その程度ならば他の機会でもできる.私の講習を受講してもらったからには,ぜひ「自分のOSのヴァージョン・アップ」をしてほしいと思う.また,そのように受講生には伝えた.果たしてどの程度伝わったかは分からないが,最後のアンケート記述を見る限り,その願いはある程度伝わったようだ.(「アプリのアップデート」ではなく「OSのヴァージョン・アップ」というのは京都橘大学の池田修先生の言である.)

 さて,今回も15種類の絵本によるブッククラブを最初に行った.そして,選んだ絵本の紹介ポップを作成していただいた.本当に現職の先生方の表現力には恐れ入る.楽しいものがいっぱいできました.
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学生のリフレクションを授業の始めに紹介した

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 授業でScrapboxを本格的に使い始めて2週目。先週の授業では学生にScrapboxを設定させ、授業の終わりに授業への感想や意見・質問などを書かせた。そのリフレクションを原則全員分、コピペで自分の授業用Scrapboxに貼り付け、第2回目の授業の冒頭で学生たちに紹介した。なかなか良い感じだった。

 この方法は塩澤一洋先生がご自分の授業で行っておられることである。先生の場合は、今まではペーパーで提出させたリフレクションをScanSnapで読み取り、その画像を貼り付けて学生たちに紹介しておられた。昨年、授業見学に行ってその様を見る機会があったのだが、驚いたのはこの紹介に30〜40分くらいかけていたことだ。先生は学生からの質問の部分のみの画像を紹介し、それに1つずつ回答しておられた。こうすることで前回の授業の復習になるし、何よりも先生の信念として「一人の疑問はみんなの疑問」ということで、質問を出すことは受講している学生全員への貢献になる、という考えだ。だからこそ、その質問には一つ一つ丁寧に回答するということだった。その考えは素晴らしいと思ったが、何しろ30分くらいの時間をかけることに恐れ入った。そこまで徹底しているのか、と。本学でも学生のリフレクションを紹介している教員はいるが、このように時間をかけてしているとは思えない。

 そして塩澤先生は、今期の授業ではScrapboxでリフレクションを書かせ、それをコピペして学生に紹介していると伺った。私も今期は、せっかくリフレクションをScrapboxで書かせているのだし、コピペするのなら簡単だろうと思い、言葉指導法Ⅰの授業でこの形式を採用することにしたのだ。

 やってみて、まず準備が大変だった。読むべき学生のリフレクションは134名分。これをガーっと読み、引用すべき部分を一人一人コピペしていった。うーん、時間がかかったなぁ。2、3時間はかかっただろうか。昨日はさらに、国語の授業のためにギヴァーの質問づくりを自分でもやっていたので、合わせて5〜6時間くらいScrapboxの画面を見続けていただろう。疲れ果てた。ダークモードにしていなかったのだが、そのせいもあるかなぁ。体の芯から疲れてしまった。

 それでも、今日の授業の冒頭30〜40分間、学生のリフレクションを紹介し、一言ずつコメントを加えて行った。時にはそこから詳しく話すこともあった。学生は、中にはつまらなそうにしていた者もいたが、概ねニコニコと聞いていてくれたようだ。これから今日の分のリフレクションを読むのだが、はてさて学生がどんな感想を書いているか、楽しみである。

 このおかげで、今日予定していた内容は全部終わりきらなかった。でも、それもいいのではないのだろうか。授業はアドリブ。その場限り、1回限りのライブである。ライブなのだから、予定していたことが終わらないのは当たり前。それは次回以降で回収すれば良いことだ。何よりこのライブ感、アドリブ感を大事にしていきたい。それでこそ、わざわざ大学まで来て、しかも教室でパソコンを開き、Scrapboxの画面を出していて、私の話を聞く意味だ。ありきたりの教授内容ならばレジュメを配って、読んでおけで済んでしまう。そうではないことの意味を追究しなければ、授業は楽しく、面白くならないだろう。

学生のリフレクション・ペーパーをScrapboxに移行して絶好調!

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 本学は10月から後期の授業が始まった。後期の授業は前期から継続している教養Ⅰ(国語)に加えて言葉指導法],国語が始まった。今年の後期授業はこれらの授業のすべてでリフレクション・ペーパーをScrapboxに移行した。これが絶好調である。(^_^)

 これまで,これらの授業では授業のふりかえりを大福帳を使って学生に書かせていた。大福帳は非常に便利なもので,学生たちが授業に対してどんな思いを抱いているか,15回の授業分を一覧できる。また,教員とのやりとりもそのまま残るので,お互いの理解を一層図ることができるのだ。ただ,紙媒体の宿命として,他の学生同士で内容を確認することが難しいのと,比較的厚めの紙に印刷するので,毎回の授業にその紙の束を持ち込まなければならないのが玉に瑕だった。

 今期,成蹊大学の塩澤一洋先生がリフレクション・ペーパーも含めて全面的にScrapboxに移行した,という記事をブログに書かれた。これを読み,先生に直接質問するなどして,大福帳の機能をScrapboxで実現する見通しがついたので,私もリフレクション・ペーパーをScrapboxを使って書かせることにしたのだ。

 第1回の授業が終わった今日,リフレクション・ペーパーをScrapboxに移行した感想として,「これはいい!」というのが第一である。何しろ紙の束を持ち歩かないで済むことが,こんなにも楽なものかということを実感した。今までは授業資料の紙束と大福帳の紙束を用意して授業に臨んでいた。40数名の授業ならまだいいけれど,私は134名の授業を2コマ担当している。この授業のための資料+大福帳の紙束は,持ち運ぶのに大変だったのだ。しかし,その紙束がほとんどなくなった。私が授業に持っていくのはMacBook ProとAppleTVとテキスト類のみである。第1回目の授業はいろいろと説明することがあるので,紙資料も持っては行った。しかし,次回からは紙資料を配らず,学生には私が授業で伝えたことをガンガン書きとらせるつもりである。そうなると,私が持っていくのは本当にデジタル機器のみくらいになる。そして,今までは授業の終わりに学生が大福帳を書き終えるのをずっと待っていて,学生が全員出し終えたのを確認したら,それを番号順に整えて持ち運ぶということをしていた。これが結構時間がかかるのである。それが,Scrapboxで大福帳を書かせると,極端なことを言えば授業時間外に学生が書いても問題はない。よって,授業の終わりは学生にScrapbox大福帳を書く時間を取ってやるだけで,私には時間的な余裕ができた。いやぁ,これはいい!

 大福帳をScrapboxで書かせることのもう一つの利点は,学生が書いたリフレクションの内容を次の授業で学生たちに紹介する際に,引用することがとても簡単だということだ。今までの紙媒体でこれをするとしたら,学生の大福帳をいちいちスキャナで読み取り,さらに画像を加工しなければならなかった。それが,Scrapboxで書かせているので,引用はコピペで自由自在である。もっとも,リフレクションの内容を学生に紹介するのは,今までの授業ではあまり行っては来なかった。Scrapboxでリフレクションを書かせたのを契機に,特に言葉指導法Ⅰの授業で取り組んでみたい。

 もう一つ期待していることは,学生のリフレクションに対して私がコメントを書いていたのだが,そのコメント書きの手間が軽減されることだ。今までは大福帳の1枚1枚に手書きでコメントを書いていた。これが,パソコン上でキーボードを使ってコメントすることができる。私にとってはこの方法がより早くできる。どれだけ手間が軽減できるか,今後に期待である。

 こうしてScrapboxを中心として授業を展開していくと,私の授業形態も今までとは変わってくるように思う。これまで,私は自分が授業で話す内容を事前にかなり作り込み,資料もしっかり準備して授業に臨んでいた。しかし,Scrapboxによって学生のリフレクションを簡単に授業に生かすことができるようになると,せっかくの学生の意見や感想を活用して,話す内容をアドリブでできそうである。授業というものは,おそらくそういうものではないだろうか。授業の時間内で生起することそのものが,学生にとってはまさに本物である。授業以外の時間・場所で用意されたものを予定通りに示されても,それは真実味を失うものになる。そんな用意されたものがあるのなら,さっさとそれを公開して自由に見させてくれよ,と思うのではないだろうか。授業という1回きりの時空間に出席していることの意味は,その時間内に生起することを体験することにある。かけがえのない1回性のものを味わうために,人は授業に出席するのではないだろうか。それならば,教員が話す内容もその時間内で生み出されなければならない。それは,緻密な準備とは対極にある,いや,実際はその準備に支えられた,その場限りのアドリブであるべきではないだろうか。今回のScrapboxへの移行が,私の授業にそんな変化をもたらすとしたら,とても意義深いことだと思う。

新潟市内の中学校の先生の実践が博報賞奨励賞をいただきました

https://www.hakuhofoundation.or.jp/prize/recipient/2019/15.html

 私が少しだけ関わることのできた,新潟の中学校の先生のリーディング・ワークショップの実践が博報賞奨励賞に選ばれました。おめでとうございます!

 受賞されたのは,今は新潟市立の高校に移られた吉澤先生です。私は2016年に新潟青陵大学を会場にして,リーディング・ワークショップやライティング・ワークショップの紹介者である吉田新一郎さんを講師にお招きして,リーディング・ワークショップの公開講座を開催しました。その時に受講者として来てくださったのが,吉澤先生です。先生はその後,吉田さんから個人的にアドバイスを受けて,同僚とともにご自身の所属校であった新潟市立早通中学校でリーディング・ワークショップの取り組みを始めました。私はこの実践が始まるのに際して若干のアドバイスをしたり,中学校を会場にして行われた研究会での助言者を務めたりしました。その後も吉澤先生は3年間ほどこの実践を続け,目覚しい成果を挙げました。

 今年度,吉澤先生は市立高校に異動されました。そして,これまでのリーディング・ワークショップの実践をまとめて発表することにしたのです。最初は別の団体に応募したのですが思わしくなく,吉田さんのアドバイスを受けて博報賞に応募することにしました。そこで,私がその推薦者になったというわけです。

 吉澤先生の実践は大変意欲的なものです。学校図書館や司書との連携はもちろん,早通小学校とも連携をとりました。いわば町ぐるみの読書活動の取り組みとなりました。この実践で指導を受けた生徒たちはとても楽しそうに読書に取り組んでいました。吉澤先生自身も生徒たちの反応や姿に多くを教えられたと言っていました。リーディング・ワークショップは生徒も成長させますが,教員も成長を促すものだと言えるでしょう。

 もちろん,この賞は吉澤先生の素晴らしい実践が認められたものです。でも,その知らせを受けた時,私も自分のことのように嬉しかったです。リーディング・ワークショップの実践が公に認められたのはとても価値があることだと思います。本当に良かったと思いました。

教員免許状更新講習1回目

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 今年は教員免許状更新講習を2回行うことにしている。その1回目が28日(土)に新潟市中央区のメディアシップで行われた。

 私はこの講習を2年前から担当している。今年で3年目だ。3年前から,内容は「体験しよう! 生涯にわたる読書家を育てる読み聞かせの世界」と題して,対話読み聞かせ,考え聞かせ,いっしょ読みを紹介し,受講生の皆さんに体験してもらっている。このことを通して,少しでもこれら3つの読み聞かせの方法が普及し,読み聞かせの可能性が広がってほしいと願っている。

 講習は,私の話す部分に時間がかかりすぎて,せっかくの体験部分の時間配分が少なくなってしまった。読み聞かせを一人5分間に限定して行わせざるを得なかった。これは良くないなぁ。まずはしっかり体験してもらわなければ,どうにもならない。今年は2回目が2週間後に予定されているので,この時は私の解説をミニマムなものにして,受講生の体験部分をなるべく多く取るようにしよう。また,「責任の移行モデル」についての説明を最初にしたのだが,それだとやはり,自分で3つの読み聞かせの実施計画を立てる際に時間が経ちすぎて分かりづらいかもしれない。次回は実施計画を立てる直前の段階で説明することにしようか。

 また,今回は冒頭で「絵本によるブッククラブ」を実施した。15種類の絵本を私が用意し,読みたい絵本を選んだ2〜4人のグループで自由に絵本について話し合ってもらった。その後,選んでいない他の人にも絵本の良さを伝えるよう,簡単なポップを作ってもらった。それがもう秀作揃い! さすがは現役の保育士,幼稚園教諭の多い受講生の皆さんだ。以下のものである。

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 いやぁ,受講生の皆さん,素晴らしいです! お疲れ様でした。

学内ICT研修会でScrapboxを紹介した

 今日,本学の情報化推進委員会の主催でICT研修会が実施された。今までも何度かこうした学内研修会は行われてきた。しかし,授業でICTを大々的に活用している教員はそう多くはなく,またその活用法も「すごいけれど,ちょっと自分にはできないな〜」とか「やってみたいけど,まずどう設定したらいいのかな? 失敗したらパソコンを壊しそうだな(壊れないけれど)」という思いを持ってしまう教員が多いのではないかと思っていた。そこで今年度,私は情報化推進委員会の委員になり,研修会を企画する側に回ったのを機に,私と同じ学科のもう一人の委員と共同して,「あなたもできる?! ICTプチ活用事例報告&活用指南」と題した研修会を行なった。ICTを大々的に活用している教員は少ないが,少しなら活用しているという教員は意外に多いと思う。その,ちょっとした活用をしている教員が数名集まり,それぞれの事例を簡単に報告して,さらに参加された教員にその活用法の実際を pear to pearで指南しよう,というわけだ。

 今日の研修会で事例報告をしてくれた教員は4名。一人はGoogle Formで授業内小テストを実施しているものである。もう一人はGoogle Classroomで学生のリフレクションのやり取りをしているものである。もう一人はGoogle Driveで学生の手書きノートの写真を提出させ,お互いに活用させているものであった。そして私はScrapboxを紹介した。私は前期の授業でかなりScrapboxを活用してきた。その様子を見ていただいたのである。

 今日の研修会の肝は,4人がそれぞれの事例を5〜10分で紹介した後,部屋の4隅に散らばり,参加者は興味を持った事例を発表した者のところに行って,より詳しい説明やら,設定方法やらを聞く,という後半の部分である。ここで,興味を持った事例を自分もやってみようという気持ちをぐっと後押しできると思う。

 私のScrapboxについて,6〜8名の教員が来てくれた。そこで,上記のプロジェクトに招待し,ページの共同編集を体験していただいたり,Scrapboxの階層表記とその編集の容易さについて説明し,体験してもらった。さらに自分のプロジェクトを新たに作ってもらい,それを授業でどう活用するかについて,個々に説明したり質問に応じたりした。

 まあ,Scrapboxをすぐに理解するわけにはいかないし,何より自分で少しずつ使ってみることで一層わかってくるのだろうと思う。そもそも私自身もまだScrapboxを十分に使いこなしているとは言えない。それでも,Scrapboxを授業に活用し,授業がより学生にとって楽しいものになって欲しいと願っている。

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を観た

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 この夏,ぜひ観てみたいと思っていた映画がある。それが『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』である。私は映画をほとんど観ない。そのため,今週末で新潟での上映は終わりと知っていても,なかなか腰を上げずにいた。しかし,家族の応援もあり,意を決して観てきた。うん,やはりよかったね。

 正直なことを言うと,少々難しかった。何しろ完全なドキュメンタリー映画である。もちろん字幕は映し出されるのだが,解説や場面説明の類は一切なし。今,何が映し出されているかはもちろんわかるのだけれど,それが全体としてどんな意味を持つのか,先の場面と今の場面との繋がりは何か,そもそも制作者はどんな意図でこれを映し出しているのか,などは何も語られない。それでいて,10分の途中休憩も合わせて3時間45分くらいかかるのだ。なおかつ,映画館の環境がやや窮屈なものだった。そうした条件もあって,期待していたほど堪能した!とは言えなかった。この映画はかなりのレディネスを必要とするのだろう。事前にニューヨーク公共図書館がどう言うものかをある程度知っていないと,あるいは日本の図書館行政を知っていないと,この映画の真の良さを味わうことはできないだろう。東京では『未来をつくる図書館』の著者,菅谷明子さんをゲストスピーカーに招く映画館があるようだが,そうした演出がないと一般の人には理解しにくいだろうなぁ。

 それでも,一つ一つの場面に映し出されるものは流石に目を見張るものばかりである。これが図書館の活動!? と思わせるものがいくつもあった。これは事前の期待通りであった。中でも印象に残っているのは「黒人文化研究図書館」の存在と活動である。アメリカでもある教科書会社が発行する教科書は,かつて奴隷として無理やり連れてこられた黒人たちは自らの意思で働きに来たかのように記述しているそうだ。しかし,黒人文化研究図書館の館長は,そうした間違った記述を教えられても,この図書館に来れば別の記述を目にすることができ,正しい姿を確認することができる,と言っていた。図書館は,全ての人に(本当に全ての人。障害者やホームレス,貧困層なども含む)等しく情報にアクセスする権利を守り,そのための情報を収集する場所であることがわかる。同時に,政府や一部企業の偏った考え,自分たちの都合の良いような見方に人々を誘導しようとする勢力に対して,あらゆる情報へのアクセスを保証することで,そうした偏った考え方から人々を守る働きをもする。それが図書館なのだと理解させられる。まさに,民主主義の砦が図書館なのである。

 映画では,何度も図書館の運営費をどう捻出するか,乏しい予算をどう配分しやりくりするか,その話し合いの様子が映し出されていた。上記のような尊い活動も,運営スタッフたちのこうした努力と信念によってなんとか支えられている状況だ。彼らは公共図書館が社会から求められている機能,姿を実現するために一生懸命になっている。それは政府の意向を慮るようなものではなく,民主主義という形而上的な理想をこの地上に実現しようと必死になっているかのようだ。それは,恐ろしく美しい。そして,不断の努力を続けていない限り砂上の楼閣になってしまう,危うく脆い作業である。それを,信念を持って取り組んでいる人々の姿が数多く映し出されていた。うーん,やはりいい映画だな!