対照関係のキーワードを表で理解する

 9組での授業。「ネットが崩す公私の境」の3時間目である。前回は生徒から、自分がこの文章を読んで理解しにくい箇所を指摘させた。今回は、その指摘された箇所に傍線を引いたプリントを配った。いやぁ、この作業は楽しかった。生徒が、どこが分からないのかを如実に知ることができる。もちろん、この箇所は分かってくれよなぁ、という所にまで指摘するものもいる。でも、高校生ならこの箇所は分からなくて当然だよな、という箇所にはちゃんと指摘があって、嬉しい。分からない箇所を指摘する力を彼らは持っているようだ。他に、文中の表現を取り上げた者もいて、「プライベートとパブリックの境が溶け落ちる」という箇所に「何故『公私』と言わないのか」とか、「何故『溶け落ちる』という表現を使うのか」と指摘した者がいた。短歌の授業で彼らに考えさせたことがしっかり生きているようで、とても嬉しい。これは分からないよね。考えさせると面白いかもしれない。
 さて、今日は以上の指摘箇所について生徒同士で教え合わせた後で、黒板いっぱいに「写本」「活版印刷」「インターネット」の3つが対照できる表を書き、項目として「著者とは?」「読者とは?」「利点」「欠点」の4項目を挙げて、本文の内容を参考に表を埋めさせた。この文章はこうした対照表を作ると、彼らが疑問に思っている箇所がきわめてクリアになる。ただ、「写本」の項目は本文にはほとんど触れられていない。これは、読者が既有知識として持っているものだろう、という前提の元に著者が書いているからである。何しろ朝日新聞に発表された文章だ。それくらいは知ってて当然、ということだろう。だが、生徒には厳しいだろうなぁ。
 生徒の様子を見ると、表を埋めるのに結構難渋していそうだったので、まずは「写本」の項目から私が解説しつつ表を埋めていく。今日は「写本」と「活版印刷」の項目だけしか触れられなかったが、こうして対照的にまとめていくと、生徒の疑問点が表の中にちゃんと当てはまっていき、理解できるようになる。こうすれば「一目瞭然」の状態になるからだ。
 対照表による理解はなかなか強力だ。これをすると、筆者の議論の抜け落ちている箇所も明らかになる。そこが私の、この後の展開の狙いどころである。