またも牧水の歌までで今年は終わり

 9組での授業。前回は啄木の歌の途中で終わってしまったので、そこから再開する。
 母を背負った時に「そのあまり軽きに泣きて」と続く、その「軽き」を感じた時に何故泣くのかを生徒に考えさせる。「お母さん、良かったねぇ、ダイエットに成功して」みたいな感涙ではないよなどと軽口をたたきつつ、軽いことを感じて涙を流すのがけっして当たり前のことではないことを気づかせる。生徒に指名したところ、「母が衰弱したのに気づいたから」と答えた。悪くないと断りつつ、「たはむれに母を背負ひて」とあるから、この母は健康であることを指摘する。もし病弱ならば「たはむれ」ではないからだ。別の生徒に指名したところ、「年を取ったから」と答えた。そちらの方向だろうね。そこで、母が年老いたことに気づいて涙を流したのだ、とまとめる。
 そして、「たはむれに母を背負ひて」という親愛さからは歩みが進むだろうし、母が意外にも年老いたことに気づいた悲しみからは歩みが止まるだろう、その二つの感情のせめぎ合いが「三歩」という歩数なのではないか、と指摘した。「一歩」では止まりすぎる、「五歩」では進みすぎる、「三歩」という歩数が二つの相反する感情のせめぎ合いとして適当な数ではないかと思うのだ。
 次に牧水の「白鳥はかなしからずや」の歌を扱う。疑問点を出させてさまざまに検討した後、牧水の孤独を主題として先に示し、その根拠を考えさせる。生徒からは「空の青海のあをにも染まずただよふ」の箇所を指摘して、白鳥が周囲の青に染まっていない点を答えてくれた。ちゃんと色彩のコントラストを指摘している。
 次の茂吉に少し入りかけたが、時間切れ。今年はこれで終わりである。短歌はなかなかおもしろい授業が展開できる。疑問を持たせやすい点、それについて吟味しやすい点、さらに主題を先に示してその根拠を考えさせやすい点がとてもいい。短歌の授業はもっと取り入れるべきだなぁ。