源氏物語「柏木」の授業

 7組での授業。このクラスは3分の1程度しか出席していなかった。生徒にどのような授業を望むか聞いたところ、僅差で通常の授業を進めることになった。
 扱うのは「柏木」である。シラバスでは「御法」を読む予定だったのだが、読もうとしていた箇所がまさに夏休みの課題としたベーシックマスターに載っており、すでに解いた生徒も多いだろうと思って、泣く泣く「御法」は取りやめた(文系の生徒に聞いたら、ベーシックマスターで「御法」の問題を解いたのは数人だったけれどね)。
 さて、「柏木」である。この冒頭箇所は源氏が薫の五十日の祝いをする場面なのだが、その中ですでに出家してしまった女三の宮を今更ながら大切にする、という記述がある。そこで、こんな質問を立てた。

 女三の宮は源氏の正妻となった人であり、元々大切に扱うはずの人なのに、何故この場面で「今更ながら」大切に取り扱うのか。

 この問題を考えさせるために、出席していた生徒を4つのグループに分け、グループ内でこの問題を考えさせた。生徒はこれまた意欲的に話し合いをしてくれて、非常に興味深い解答をしてくれた。

解答1
 光源氏は、自分の正妻の女三宮が子どもを産んでしまい、さらに女三の宮はその罪を埋めるかのように出家してしまったので、あえて格別にもてなすことによって女三の宮に彼女の犯した罪を再確認させ、出家したところでその罪からは逃れられないということをそれとなく暗示して皮肉るため。

解答2
 女三の宮が出家してしまい、薫の五十日を一緒に祝うことができず、女三の宮に申し訳なく思い、今までの女三の宮に対する接し方をつぐなおうと思ったから。

解答3
 源氏の本当の子どもではないと周囲に悟られないように、女三の宮を大切にしているように見せるため。

解答4
 女三の宮が出家して、五十日の祝いに薫を見ることができず、それが残念でかわいそうだと光源氏は思ったから。

 どうだろう、これらの解答は! いやぁ、私は嬉しかった。「柏木」巻に至るまでのあらすじは説明したが、他のことはほとんど説明せず、口語訳も全く始めていない段階で、生徒たちは本文の記述や私の配ったあらすじプリントの内容などの資料を駆使して、ここまでの読み取りをしてくれたのである。いやはや、大したものだ。
 もちろん上の解答には見当外れのものもある。しかし、それはそれなりに状況を読み取った上で、考えられることについてまとめてくれている。
 ちなみに、生徒にどの解答を指示するか手を挙げさせたところ、解答3が一番支持を集めた。さあ、明日は生徒たちが揃うだろうから、これらの問いと解答を示して、さらに生徒たちに考えさせよう。