「柏木」の授業

 7組での授業。「柏木」の第4段落、源氏が薫を見て、「汝が爺に(似ることなかれ)」とつぶやく場面である。この言葉は白居易漢詩によっている。その直前にも、源氏がこの間詩の一節を口ずさんでいる。この場面で、その白居易の原詩を示さないわけにいかない。しかも、いろいろと生徒に考えさせたい場面である。そこで、まず次のプリントを作成し、配布した。

 原詩とその書き下し文と、さらにその大意とを示してある。そして、2つの問題を立てた。

  1. 源氏にとって薫が生まれたことの「喜び」と「嘆き」とは何か?
  2. 源氏が薫に対して「汝が爺に(似ることなかれ)」と言って、どんなことを忠告したいのか?

 これをまずは全員に個人で取り組ませ、次に全くフリーにしてお互いに答えを確認し、正確な解答ができるよう学び合わせ、1問目はそれぞれ1人ずつ、2問目は5人の生徒を任意に指名して、黒板に書かせた。その答えがこれである。


 私は、こうした全員に解かせる課題には2つの種類があると考えている。1つは「答えが一義的に集約できる問題」、もう1つは「答えが集約できずに発散する問題」である。1つ目は論理的に考えることによって、まず全員が1つの解答へと集約できるものである。今回の問題の第1問目がそれに当たる。
 2つ目は論理的に考えても複数の解釈が成り立ち、解答が1つに集約できないで複数存在するものである。今回の第2問目がそれに当たる、と考えられる。今回のようにグループ学習をさせたり、集団で問題を解かせる際には、この2つの種類の問いがあることを意識していなければならない。そうすることにより、集約できる問題は生徒の理解を促すよう指導ができるし、発散する問題はむしろ解答が様々な方向へと分かれていくのを積極的に進めていかなければならない。
 今回は、1つ目の問題で生徒の書いた解答は「嘆き」の方が間違えていた。そこで、生徒に問い返せばよかったね。私がすぐに解答を修正してしまった。
 2つ目の問題は、事前に「汝が爺に」の「爺」には「柏木」と「源氏自身」の2つの可能性があることを示し、生徒の意見を書かせた。5人に書かせたところ、「柏木」と考えた者は3人、「源氏」と考えた者が2人だった。その内1人は柏木にも共通する解答をしたので、実質的に「柏木」4人、「源氏」2人ということか。解答の内容は、どちらもその父のように愚かなことはするな、というものだった。柏木を爺と考えた場合、もう1つの可能性がある。そこで、生徒に問うたところ、ある生徒が解答してくれた。まさにその通り。「柏木のように短命であるな」ということである。いやぁ、このように生徒からこの解答が出てくれるととても嬉しい。やはり1問目も同様に生徒に投げ返すべきだったなぁ。
 ということで、久しぶりに古典で様々な考え方を学ぶことのできる授業を行えた。