「山月記」の授業

 8組と3組での授業。3組はようやく現代文の授業があった。これで今年に私が出るクラスにすべて出たことになる。3組では授業開きを行い、「山月記」の音読をグループで行わせる。
 8組は2時間目である。まずは配布済みのプリントにより「山月記を読んで、質問・疑問を出そう」という課題を確認しようとしたが、これはプリントを回収することで吸い上げることにする。
 次に課題2「人間が虎になるわけだが、類似した話を挙げてみよう」を生徒同士で話し合わせ、指名して挙げさせる。当然これは、カフカの『変身』を期待したいところだろう。だが、私はそうは考えない。ともかく「変身」する話なら、アニメだろうとテレビ番組だろうとOKである。それらの中から共通するものを確認したいと思っていた。生徒からは「仮面ライダー」「ウルトラマン」「セーラームーン」「ゴレンジャー」「狼男」などなどが出てきた。私からは「ジキル博士とハイド氏」を挙げた。個人的には「サイボーグ009」も挙げたいところだったが、さすがに知らないかなぁと思い、控えてしまった。私の知る限りでは、この「サイボーグ009」あたりが典型的なのだが、「仮面ライダー」もそうだろう。また「狼男」でも、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」以降に出てくるルーピン先生もそうだ。つまり、変身譚の主人公は「ヒーロー」であるというプラス面と同時に「普通の人間でなくなった悲哀」というマイナス面も持っているのである。変身する者にはプラス面とマイナス面の両面がある、これは生徒にぜひ知っておいてもらいたいことだ。これを「山月記」の李徴に当てはめるとどうなるか。後で考えさせたい。
 次に小説全体の場面分けを行う。全体を7つの場面に分けよと指示を出したのだが、これがめちゃくちゃになってしまった。第1段の李徴失踪のいきさつと第2段の袁傪との再会までは問題なかった。しかし、その後の李徴の独白の部分の分け方を生徒に指名して聞いたところ、1番目の「変身後の苦悩」と2番目の「誌の伝録の依頼」とを分けずに一続きにしてしまう解答が続出した。私は、場面分けのポイントとして、「時間の推移」「場所の移動」「話題の変化」などを挙げたのだが、この「時間の推移」のみを考えたのではないか。そうすれば1番目と2番目とはつながってしまう。そこで、李徴の独白の部分だけで4つに分かれることを指摘し、区切り直しをさせた。実は私は、例えば「時に残月光冷ややかに……」などの場面の説明の段落を前の独白に続けるか、それともそこから新しい段が始まるか、という問題を生徒に考えさせたいと思っていた。しかし、区切り直しをさせた後に生徒に聞いてみると、ほぼ全員が場面の説明から新しい段を始めていた。仕方がなく、前の段にくっつける考え方もある、というようにして説明せざるを得なかった。どうも歯切れの悪い授業になってしまった。
 ここまで場面分けに苦労するとは思わなかった。他のクラスでは改良が必要だなぁ。このあたりはあまり時間をかけず、早く内容の読解に進みたいと思っているのだ。