随想を読む際の留意点

 9組と3組での授業。「材のいのち」の3時間目である。
 前時で文章構成図を書かせているので、文章全体の把握はできていることだろう。そこで、今度は3つの部分に分けた本文の細かい部分を確認していく。内容を確認する設問が記してあるプリントを配布し、それを考えさせる。だが、その前に随想を読む際の留意点について話をする。
 随想とは、まず当然にその文章が表そうとしているテーマがある。この「材のいのち」なら、「木(=材木)は生きている」ということだ。そこで、一般的にはなかなか受け入れられないこの事実を、筆者の報告を受けて理解していくことが必要である。
 しかし、随想にはそれだけではないものがある。それは、例えばこの文章では、上記の「木は生きている」という事実を、筆者の幸田文はどうやって知ることができたのだろうか。それは、西岡楢二郎氏という卓越した宮大工から直接に聞いた、その人間性、人格、人柄が筆者の認識に大きく影響している。また、これを我々に伝える幸田文という筆者自身の人格もまた大きな要素である。随想とはそのように、筆者の人格が色濃くその文章に表れている。
 したがって、随想とは二つの読み方を要求されることになる。一つは初めに指摘したテーマを読み取るために、文章を論理的に読む読み方である。いわば「評論読解的」な読み方が必要だと言えるだろう。そしてもう一つは二番目に指摘した筆者の人格等を読み取る、つまりそれは行間を読み取り、心情を読み取るいわば「小説読解的」な読み方が必要である。随想を読む場合、この二つの読み方を念頭に置いて読み進めるべきである。
 私が作成したプリントの設問は、これらの2種類の読み方を要求される設問が混在している。よって、なおのことこの二つの読み方を意識していく必要がある。そうしたことを話してから、設問の解答・解説に移っていった。