『孤笛のかなた』

狐笛のかなた

狐笛のかなた

 上橋菜穂子の作品である。一昨日、この本を読んでいることを紹介したが、今日の夜、残りを一気に読んでしまった。何しろこの小説は学校で少し読み始め、そして今日の夜、2月の最後に日に一気に読み終えてしまった。しかも、この本は本校の図書館から借りたものである。図書館から借りた本を読み終え、そして感動を味わったのは久しぶりだ。小・中学校以来かな?
 霊孤である野火と「聞き耳」の力を持つ小夜の物語である。二人が(一人と一匹?)出会い、心をつなげ、愛し合い、助け合う。そして最後にはお互いを大切に思う心により、二つの領国を巡る深い呪いの輪廻は断ち切られ、陰謀も潰えてしまう。しかし、その代わりに、小夜は人間の姿を失う。野火を思う真っ直ぐな心のために、何ものも恐れることなく孤笛を吹き、野火の命を救う。その代償は、しかし大きなものだった。
 霊孤と人間のラブ・ストーリーという、そもそもがハッピー・エンドたり得ぬ物語の結末なのだから、読み終わった後も強い不全感、大きなしこりが残る。まるで『獣の奏者4 完結編』を読んだ後のようだ。だが、異種族の二人の行く末としては、おそらくは一番よい結末なのだろうね。可哀想なのは、一人残された小春丸だが、彼も領主の跡取りとして生きねばならないのだから、これまた仕方のないことか。
 「守り人」シリーズも、最終的にはバルサとチャグムはお互いを強く思いながらも別れていく。『獣の奏者』に至っては、何しろエリンが……。おっと、言わないでおこう。そして、この『孤笛のかなた』も、ほろ苦い結末となった。うーむ、素晴らしい小説なだけに、この不全感はたまらないなぁ。
 もちろん、☆5つです。自信を持って薦めます。