NHK総合「ザ・コーチ 人生ノ教科書 横道にそれてもいいんだ 〜伝説の国語教師 橋本武〜」 

http://www.nhk.or.jp/tamago/program/20091013_doc.html
 昨晩、放映されたものである。眠い目をこすりながら、それでも興味深く視聴した。
 橋本武氏は97歳。今から20年程前まで、灘中学・高等学校の国語教師だった。灘校の国語教師になって約50年、彼の独創的な授業によって生徒の学力が増進し、東大合格者数が全国1位となった、という内容の番組である。そして、この橋本氏の独創的な国語の授業の内容が紹介された。
 それは、1冊の文庫本を使って中学3年間を教える、というものであった。中勘助の『銀の匙』を用いて、中学の期間3年間、ずっと教えているそうだ。
 しかし、その授業はこの『銀の匙』だけを教えているのではない。番組では、氏の授業の特徴として

  1. 実体験に基づく授業
  2. 横道にそれる授業
  3. 手作りの研究資料を用いた授業

の3点をその特徴に挙げていた。
 1点目は、文章の中に出てくる様々な文物を、実際に見せたり味わわせたり、体験させたりした、ということである。駄菓子が出てくれば、生徒全員にその駄菓子を与えて食べさせてみたり、凧揚げが出てくれば実際に凧を作ってあげてみる、などである。
 2点目は、周辺知識を真面目に取り上げ、どんどん横道にそれていって知識を与える、というものである。文章に干支が出てくれば、干支の説明をしっかりすることに加えて、十干十二支を教えて、「甲子園球場」の名前の由来を教えたりするのである。
 3点目は、自作の研究資料・授業プリントを作り、それを1年間終えたら綴じ込ませて冊子にする。これを3年間続けるのだから、手作りの教科書が3冊できることになる。
 いいな、と思ったのはこの授業プリントを1年間分綴じさせて冊子にする、という点である。和綴じの方法を教わろうかな。
 灘中学・高等学校は、ある学年の教科担当は6年間持ち上がりだそうである。つまり、最初に中学1年生の国語を担当したら、その教師は6年間その生徒の国語を教えることになる。したがって、その学年の学力は担当した教師に全責任がかかることになる。そもそも、灘校に採用されるような教師だ、もともと力量の高い教師だろう。それが、自分の全責任である学年の国語を担当するというシステムである。これは大変であると共に、燃えるだろうなぁ。そして、いろいろな手法を試そうとするだろう。守勢に回っていたのでは学力向上は望めない。このシステムもいいなと思った。こうしたシステムならライティング・ワークショップも可能だろうな。
 1つ気になったのは、この国語教師の指導のみで灘校が東大合格者数全国1位になったのか、という点である。他の教師は何の特別な努力をしていなかったのだろうか。番組ではこの国語教師の取り組みと、それを許していた灘校のシステムが紹介されていただけである。私の予想では、他の教師の取り組みもあったはずだけれどなぁ。