ラジオ製作の道は遠く……

 小学6年生の長男のラジオ製作はまだ続いている。というか、まだ始まっていないというのが正確か。今日もまたこの件で1日付き合わされる羽目になる。
 私の頭にはかつて自分が持っていたラジオ製作の本の中の「スパイダーアンテナ」をつけたラジオが残っていた。それで、スパイダーアンテナやループアンテナを自作する方法をインターネットで探したところ、あるある、ちゃんといくつかのアンテナの紹介と具体的な作り方も公開されていた。具体的な設計図がないのが残念だが、それでも40cm四方くらいの大きさのループアンテナが私のイメージにぴったりだった。
 そこで息子にそうしたアンテナのいくつかをプリントして示し、ラジオ本体は昨日購入したラジオキットを使うとして、アンテナコイルを自作するといいのではないか、と提案した。息子もその方向で了承してくれた。ただ、彼はラジオの外観にも凝りたいらしい。彼の「凝る」というのは自作ラジオらしい外観にするというのではなく、あるものの中にラジオを入れるという方向のようだ。話を聞いてみると、家の模型にダイヤルとスイッチとイヤホンが付いていて、そこにループアンテナが立つ、という形にしたいのだそうだ。うーむ、私に言わせれば彼の感覚は時々ついて行けなくなる。何故、家からイヤホンのコードが……と不思議に思ってしまうが、まあ小学6年生の発想ですから、仕方がないのでしょうね。私なら、オランダの風車のような形にして、その風車としてループアンテナをつけるけれどなぁ。
 ということでようやく方針が決まったので材料調達に亀田のア○クオアシ○に行く。ここでループアンテナにするための木材を見繕っていたのだが、大問題発生! 必要な材料を選んでお値段を計算するとすでに1,000円を超えてしまうのだ。ラジオキットの入手のためにすでに1,000円を使っている。ちょっと費用がかかりすぎるかな、と思い、我が家の大蔵大臣(つまり、我が愚妻である)にお伺いを立ててみると……、夏休みの工作にお金をかけてはならない! という厳命が下った。そこで泣く泣くループアンテナは断念することになった。そして、その場でiPhoneを使ってネットに接続し、他の方法を調べてみると厚紙で枠を取るスパイダーアンテナコイルの作り方が示されていたので、急きょそれに変更することにした。
 次はその店の1階にあるホームセンターでコイルを巻くためのエナメル線を探す。ネットの情報によれば少なくとも15m、できれば20mの長さの線が必要だ。しかし、お店に売っていたのは10mのもののみ。困ってしまったが、10m×2で途中をハンダ付けしてつなげて使うことにした。やれやれ、やっと材料が揃ったか。でも、これはラジオ部分を作るためのものである。息子の考える家の模型部分はまだ具体的に考えていない。割り箸を使ってログハウス風にするか、なんてなことを考えているだけである。
 帰宅し、スパイダーアンテナコイルの型紙をネットから入手した。それを息子に渡してまずはスパイダーアンテナコイルの製作である。いや、これがなかなか難しい。エナメル線をハンダ付けしてつなげて13mくらいにして、これを巻いていく。スパイダーコイルの巻き方は型紙にある10くらいの羽根に互い違いに巻いていく。これが手間がかかる。さらに、ぼけっとして巻いているとどんどん間隔が空いてきて、型紙にある羽根の大きさでは収まり切らなくなる。ぐっ、と力を入れてエナメル線を押し込みながら巻くことになる。息子と交代で作ったのだが、結構疲れた。やはりループアンテナの方が簡単だったなぁ、と例のインターネットからの資料を見てみると、何と15cm四方のループアンテナの製作法が示されていた。40cmよりは利得が少ないのだろうが、息子の考えているイメージにはむしろこちらの方が合っていそうだった。しまった! と思ったが後の祭り。そのまま一生懸命スパイダーコイルを作り続ける。
 1時間ほどかかったろうか、何とか完成する。次にはラジオキットの組み立てである。これは1石ストレートラジオで、検波と低周波増幅を1つのトランジスタで行わせるものである。回路は簡単だが、基盤ではなくラグ板を使うものなので、少々工作が面倒だ。そのコイル部分を自作したスパイダーコイルと取り替え、さらに配線図にはないスイッチを取り付けようとする。しかし、作業を開始したのが夜中だったため、途中でアウト。明日に持ち越しとなった。
 息子はこれらの作業をどのように記憶するのだろうか。彼の中で懐かしい思い出となっていくのだろうか。決してやらされているのではなく、自分で進んでやろうとしているから、いい思い出になるとは思うのだが。