「舞姫」の授業

 4コマ目は現代文。1組での授業である。さすがに1日4コマの授業を行うのは、体力的に限界を超える。終わった後はフラフラである。この授業でも、あまりこちらの負担にならないようにと、プリント問題を生徒に考えさせ、数人に指名して解答を黒板に書かせて、それを添削するスタイルを取った。
 場面は豊太郎がロシアでエリスからの手紙を受け取り、その内容から自分の置かれた「我が地位」を明視するところ、そして、その後に続く「足を縛せし鳥のしばし自由になりて……」に至るまでの比喩表現が連続する箇所である。そこから比喩表現を数カ所取り上げ、それが何を意味するかを生徒に書かせたのだ。
 うーん、生徒はあまり正確には読み取ってくれなかったなぁ。解答を書かせたもののほとんどが読み間違えていた。文語文のせいか、すぐ次の文や近くの表現を元にして考えるという、小説読み取りの大原則が守れず、自分の印象や思い込みを元に解答しているものが多かった。文語文だろうが何だろうが、考察の根拠は本文にある。その本文を踏まえての読み取りが求められる。
 そう考えると、この「舞姫」は小説読み取りの訓練にはあまり向いていないな。読み間違いを多く誘発してしまう。読み取りをする前に、本文の解釈を間違えてしまうのだ。
 しかし、「舞姫」はやはり文語文である原文で読み味わいたい。井上靖の現代語訳はそれは格調高いものだが、何と言っても原文の繊細なニュアンスは格別である。正確に読み取らせたいし、原文の素晴らしさも味わわせたいし、難しい。