本居宣長『うひ山ふみ』

 本居宣長の本を読み始めた。この本は、私が村上女子高校に勤務していた際に、先輩の同僚から薦められた本だ。その時に早速購入したのだが、ずっと読んでいなかったものだ。いやぁ、実に読みやすい。江戸時代の古文はこんなに読みやすいものなのだろうか。明治期の文語文とほとんど変わらない。
 この本は、『古事記伝』を書いた宣長が、弟子たちに初学の際の心得として書いたものだ。その中には学問に関することや授業のあり方について考えさせられる点があって、非常に興味深い。

  • 又いづれの書をよむとても、初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、まづ大抵にさらさらと見て、他の書にうつり、これやかれやと読ては、又さきによみたる書に立かへりつつ、幾遍もよむうちには、始に聞えざりし事も、そろそろと聞ゆるやうになりゆくもの也。さて件の書どもを、数遍よむ間には、其外のよむべき書どものことも、学びやうの法なども、段々に自分の料簡の出来るものなれば、其末の事は、一々さとし教るに及ばず、心にまかせて、力の及ばむかぎり、古きをも後の書をも、広くも見るべく、又簡約にして、さのみ廣くはわたらずしても有ぬべし。(p.19)