「舞姫」の授業:理数科にて

 私は現代文の授業を3クラス持っているが、そのうち1つは理数科である。理数科の現代文は文系の現代文とは単位数が違うため、時数も違う。理数科の現代文は進度が遅くなる。「舞姫」の授業を、文系とほぼ同様に行っているが、今日の授業でようやく「明治二十一年の冬は来にけり。」の手前まで行った。明日から定期考査だが、これで一応試験範囲は終わった。
 文系と時数が違うせいもあるが、私の研究の一環として、文系の授業と理数科の授業とは(今回は)内容を若干違わせている。理数科の授業では生徒同士による話し合いの場面をなるべく押さえて授業を行っている。私の関心は、授業によって生徒が読解方略を自ら伸長させることにあるが、その伸長が、話し合いの有無によって差を生じるのではないか、というものだ。つまり、話し合いをすることによって、読解方略の伸長はより効果的に促される、というのが私の仮説である。それを実証するために、あえて理数科の授業では話し合いの場面を少なくしている。だが、全くなし、というわけにはいかない。私はそれまでずっと、このクラスで話し合いを行ってきたからだ。今回の「舞姫」だけ話し合いをしないというのも不自然である。最初に私の目的を話して、協力を求めればよかったのだね。次回はそうしよう。
 というわけだが、第3段落の読み取りの際には、やはり話し合いを少しでも導入しないわけにはいかない。エリスの部屋にある「値高き花束」は誰が買ったのかとか、豊太郎とエリスとが「離れ難き仲」になったのは何故かとか、ぜひ生徒同士で話し合って欲しい問いがある。そのため、少しずつだが隣同士での話し合いを1分間とか45秒とか行わせている。まあ、ごく短い時間だし、回数も文系に比べればはるかに少ないし、私の研究目的には合っているだろうと思う。
 しかし、そのせいか、生徒の反応は次第に不活発になってきた。このクラスはそもそもは反応のよいクラスだったのだが、あるいは3年生になったせいか、あるいは話し合いの機会が少ないせいか、最近どうも生徒の反応が鈍い。少々やりづらさを感じる。
 とはいえ、「舞姫」が終わるまでは仕方がない。これが終わったら、せいぜい話し合いをさせてフラストレーションを解放させてやろう。