「『静夜思』っておもしろいと思った」

 10組と8組での授業。8組は「桃花源記」の最後の部分を口語訳し、この文章に込められた陶淵明の思いを解説した。その後、漢詩の決まりの定着を図る。
 10組は漢詩の学習に入っていった。取り上げるのは李白の「静夜思」と杜甫の「登高」である。李白杜甫という二大詩人の作であるし、李白は絶句、杜甫は律詩と、二つの詩形をとりあえず押さえることができる。
 その「静夜思」では、まず詩の文章の解釈を行った。その後で、3つの質問をした。

  1. 季節はいつか?
  2. 作者の李白はどこにいるか?
  3. 彼は寝台の上に座って何をしているのか?(逆に言えば、何故寝ていないのか?)

 これらの質問はこの詩の解釈上重要なものだと考えている。
「季節はいつか?」これを考えることにより、月がおそらくは満月であり、詩の世界を具体的に想像することができる。生徒に質問したところ、「冬」と答えた者が多かった。月光を「霜」だと思うのは事実寒い季節だからだろう、というのが根拠である。悪くない。ただ、月が美しいのは一般的には「秋」なので、私は「晩秋」あたりがよいのではないか、と指摘した。
李白はどこにいるか?」これは、この詩が故郷をしのぶという内容から、故郷を遠く離れた場所であることは推察できる。そこで、李白の故郷が一説では四川省であることを指摘し、彼は今、都の長安にいるだろうことを説明した。
「寝台の上で何をしているのか?」これは、「何故寝ていないのか?」と考えた方がよりリアルに推論できるだろう。李白は故郷を恋しく思うがゆえに寝られない、もしくは目が覚めてしまったのだ、と考えられることを説明した。
 そこから、起承転結の一つ一つにおける視点の移動、そこから来る自然な望郷の思いと、天才李白の思考の跡をたどって、説明をしていった。
 今日の生徒の学級日誌には、「『静夜思』っておもしろいと思った」と書かれていた。そうでしょう。たった20字の中に世界が広がっている。それを紡ぐのが人間の想像力であり、さらにそれを促すのが「発問」なのである。