ロジックツリーを活用した評論教材の読解

 3組での授業。新しく評論に入った。高階秀爾氏の「『間』の感覚」である。これは『西洋の眼 日本の眼』という評論集に掲載されている文章の一部である。
 実はこの教科書教材は構造分析をするのに非常に難渋している。住居の様式が行動様式にも反映している、と冒頭に問題提起されているのだが、続いて述べられるのは西洋と日本との自然への対し方や絵画における西洋と日本の自然の扱いの違いについてなのだ。住居における違いはずいぶん後になる。これはどうもおかしいと思い、出典本を我が書斎から引っ張り出して確認してみたところ、この教材を含む文章全体ならスムースにつながっている、その後半3分の1のみを取り出し、そこから前半部分への指示語を抜いて教材としていたのだ。そのためにつながりや構成が破綻してしまっていた。うーん、教科書本文にはこうしたものが多いのだな。内容がよいからといって安易に出典から抜いてくるのは良いのだが、そのために構造が破綻してしまっても構わず教科書として掲載する。もっと教科書会社の諸兄は文章の構造というものを重要視した方がよい、と思う。そもそも、一つのまとまった文章の途中のみを教材とするのは良くない。確かに、全文を載せれば文章量が3〜4倍ほどになる。でも、そうした長文を忌避する日本の教科書の在り方はやはり間違っているのではないか。筆者が執筆した意図がねじ曲げられてしまう。文章は元のままの姿、丸ごとを提示すべきである。
 さて、そうは言っても、目の前のこの文章を生徒にどう把握させるか。そこで、むしろこの文章の構造分析の難しさそのものを扱い、生徒自身に理解させ、あるべき姿を模索させるような授業を構想した。そこで、文章構造を分析するツールに「ロジックツリー」を用いることにした。
 「ロジックツリー」は発想法の一つ、あるいはロジカルシンキングのためのツールの一つである。むしろビジネスのシーンで活用されているだろう。事実私も、ビジネス本からこの発想を得た。むろん、「ロジックツリー」を学校教育で用いている例も多くあるだろう。しかし、私は少なくとも初めてである。
http://www.kantokushi.or.jp/lsp/no612/612_02.html
 このロジックツリーで「『間』の感覚」の構造を分析させる前に、まずはこのツールを練習させるために、練習問題として私宛に届いたGoogleからのメールの構造分析を、ロジックツリーを用いてさせる、というプリントを作成し、生徒にやらせた。その後で、教科書本文の構造分析をさせた。
 生徒は真剣に取り組んでくれた。何度か作業の手を止めさせ、生徒同士で進捗状況を確認させるようにした。そのせいか、楽しそうに取り組んでくれた。
 さて、授業修了後に一度回収し、また返却するが、生徒はどこまでつっこんでくれただろうか。