漁夫辞の授業

 8組での授業。「花山院の出家」は最後の段落を残すのみとなり、それを訳し終える。ここは花山院の出家が藤原兼家の策謀であったことがはっきりとわかる箇所である。何しろ道兼が出家してしまわぬよう、護衛の武士を陰に日向に付けさせたというのだから。しかも、その武士たちが洛中は隠密に、しかし賀茂川を越えるとおおっぴらに、道兼を護衛したというところにリアリティを感じる。大鏡の作者は本当に優れたリアリズムの持ち主である。
 真のリアリズムは優れた批評性を示す。そんな良い例だと思う。
 それが終わり、後半は漢文に入る。扱うのは『楚辞』からの「漁夫辞」である。屈原の代表作であるこの作品は、何と私にとっておそらく扱うのは初めてである。あるいは恐ろしく久しぶりか。これまた、なかなか深い精神性を備えた文章である。漢文は本当に優れた精神性と論理的思考を表現する。
 さて、今日はとにかく『楚辞』という作品の位置づけ、そして「漁夫辞」という文章の背景をしっかり捕まえることに腐心する。便覧を使って解説をし、板書してまとめる。このあたりは生徒に課題を与えてやらせてもいいのにね。その後は、音読練習。彼らの音読を聞いていると、まだまだ音読練習が足りないのだなあ、と気づく。つかえながら読む者が多い。
 さて、漢文に入り、その次は源氏物語の須磨の巻を読む予定である。楽しい文章が目白押しだ。