枕草子の授業

 その7組と8組での授業。どちらも「宮に初めて参りたるころ」である。7組の方が早く進んでいたので、快調に口語訳を進め、重要な箇所や文脈で読み取るべき箇所は生徒に質問をし、確認しながら進んで、無事全部訳し終えた。事前に学習プリントを配ってあったので、その確認は次回だね。
 8組はやや遅れていた。そこで、これまたじっくりと口語訳を進める。途中、この文章の一番のポイントにさしかかる。女官がやってきて格子を「放たせ給へ」と声をかけ、女房が格子を開けようとすると、中宮定子が「まな」と言って制する。それを聞いて「笑ひて帰りぬ、」とある箇所だ。この「笑ひ」は誰が主語か、という問題である。
 生徒に訳させると、7組でも8組でも「女官が」と答えた。OK。それはそれで十分に成り立つ解釈である。しかし、これをあえて「(同席している)女房が」と読んでみると、一段と味わいが深まるのだ。つまり、女房たちは事情をすべて知っていて、笑った。すなわち、女房たちは中宮定子の「まな。」と制止した意図を皆まで言われなくとも察知したのである。清少納言が恥ずかしがって顔も上げられず、格子を開けて明るくなったらますます恥ずかしがることを気の毒に思った中宮定子のその心遣いを、先輩の女房たちはあうんの呼吸で察知して「笑ひて帰りぬ」としたのである。そう解釈した方が、中宮定子の後宮サロンの雰囲気が良く出て、とても良い。生徒の解釈も成り立つのだけれど、私はこちらを取りたいなぁ。
 というわけで、枕草子も順調に進んでいる。