普通科1日体験入学

 昨日の理数科に引き続き、今日は普通科の体験入学である。さすがに普通科、昨日とはうってかわって、700人ほどの中学3年生と引率者・保護者(小学生くらいの女の子まで)が来訪した。この生徒たちを前半・後半の2グループに分け、模擬授業と全体説明を交互に交代させて行う。つまり、今日は模擬授業が2コマあるのだ。これは、模擬授業を見学する機会が2倍になるということである。これを逃す手はない、ということで、今日は案内の仕事ももちろんやったが、模擬授業の見学に結果的に重点を置くこととなった。
 今日の模擬授業には英語・数学・理科はもちろん、社会も、そして国語も開講される。昨年は私が模擬授業を行ったが、今年は同じ2年生担当のお二人が授業をする。こうした経験はいろいろな人がするべきだ。私ももちろん授業をしても良かったのだが、私だけがこのおいしい経験を独占するのはもったいない。お二人はそれぞれ「連句」の授業と「漢文訓読の基礎」の授業を展開した。残念ながら連句の方は最初だけしか見られなかった。漢文訓読の授業は、やっていることはそう目新しいものではないが、同僚の説明の仕方が実に良かった。生徒を、日本人が漢字に初めて出会った4,5世紀頃に立ち戻ったような雰囲気を作り出し、先祖たちの苦闘を物語っていた。なるほどね、そんな説明の仕方もあったか。
 今日は他の教科の授業も積極的に見て回った。模擬授業は45分間。それぞれの教師が得意のネタで、気合いを入れて準備してきたものである。それぞれが見所が多い。その中で素晴らしかったのが英語のA先生と数学のA先生の授業である。

英語の模擬授業

 英語のA先生は映画「E.T」を取り上げ、映画のストーリーを絵にしたものを見ながらそこまでの流れを書いた英文をそらで言えるようにしよう、というものであった。ストーリーを易しい英文で記したプリントを配り、それを生徒に音読させ、訳させた。短い部分に区切った英文を一人一つずつ訳していく。教師が英文を読み上げ、生徒がすぐに訳す。2秒までの間に訳せ、という指示が緊張感とテンポの良さを作り上げていた。その時に、いくつかの文法的事項を説明し、英文解釈の肝を教えていく。そして、映画の大切なセリフを、日本語字幕をつける人になったつもりでつけてみよう、と指示して訳させる。これは、それまでのストーリーの流れを理解し、E.Tとエリオットとの友情を踏まえた上で、別れの場面にふさわしいセリフをつけるのだ。生徒たちは「僕は君の記憶の中にいつもいる」などとなかなか良い線をついた訳をしていた。映画での字幕は「イツモ ココニ イルヨ」である。うーん、目がウルウルしてきた。こういう話に、私は無抵抗に弱いのである。英語の授業で、しかも模擬授業という場で、こういう感動を与えられるとはすごい授業だ。
 その後、生徒に音読練習をさせる。二人でペアになり、ジャンケンして勝った者が英文を読み、負けた者はすぐにその英文を繰り返す。できればプリントを見ないように、とのことだ。これはいい。シャドーイングに近いものかな。そして、次には勝者が英文を読み、敗者がその訳文を読む、という作業をさせた。その後で、ストーリーをイラストにした絵を見ながら、英文全部をそらで言えるか挑戦させていた。うーん、いろいろな工夫の詰まった、素晴らしい授業だった。少々時間が足りなかったが、目的はかなり達成できただろう。
 英語にしろ国語にしろ、言語の教科なのだ。しゃべらせなくてどうする、と思う。しゃべって、コミュニケーションを取って、そして内容を理解する。そうした形ができていた授業だった。まあ、この先生は『滅び行く思考力』などを読んでおられる方だ。私と似た問題意識を持っている。面白かった。

数学の模擬授業

 数学のA先生は、様々な数を「10のx乗」という形で表現できることを取り上げていた。指数法則を紹介し、それを活用することで、例えば「2=10の0.3乗」「3=10の0.48乗」などということを非常に分かりやすく教えていた。そして対数方眼紙を使って、かけ算を長さで表せることをやらせていた。これが計算尺の原理なのだね。
 全部は見ることができなかったが、これまた面白かった。プリントに書いてあった「数学は自由だ!」という言葉が印象的である。国語も「自由だ!」と叫びたいね。様々な応用が利くことを示してやりたいものだ。