「中納言参り給ひて」の授業
6組と8組での授業。これで試験前は終わりである。6組では本文の口語訳は終えているので、内容の読解と背景説明から始める。8組では口語訳の残りを終えて、同様に説明をする。
この「中納言参り給ひて」は清少納言の「われ誉め」の1つである。清少納言が自らの才知を自慢している章段であると言える。だが、この話には次の一節があることにより、そののどかな印象は打ち破られる。
かやうのことは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、「一つな落としそ」と言へば、いかがはせむ。
これは清少納言が、中宮定子の不遇の時、つまり中納言隆家が花山院襲撃事件の犯人として捕らえられ、都を追放された後の時に執筆したことを物語っている。しかも、同僚の女房たちが「一つも書き漏らすな」と言うように、彼女たちも清少納言の才知の素晴らしさを認め、『枕草子』に書き入れるべきだと言ったのだ。この話は、清少納言が中宮定子を中心とした定子後宮文化の素晴らしさを後世に残そうとしたものであることが分かる。一見楽しそうで、また清少納言の自慢が鼻持ちならなそうな話だが、その背景には深い悲しみと決意とがある。
これらを生徒に何とか説明しようとした。できれば時間を取って、生徒にさまざまな感想を出してもらい、その上で表現されたものからこれらの背景を気づかせるという授業を展開すべきだろうね。だが、試験前のたった3時間くらいでこの話を終えようと言うのだから、無茶なことである。残念ながら私の一方的な説明で終わった。
これらは『源氏物語の時代』から教えられたことだ。生徒にはことあるごとにこの本を薦めた。せめて彼らがこの本を読んで、私が感じた以上のことを感じてくれれば嬉しい。
源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)
- 作者: 山本淳子
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