『コンピュータと教育』
- 作者: 佐伯胖
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/02/20
- メディア: 新書
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コンピュータと教育を考えた文献としては定評のある名著。私はAmazonの古本で購入した。
情報教育を考える際に、まあ読んでおいた方がよいかと思って読んだ。そうしたら、「第五章 『わかること』の原点にかえる」の章で、「根元的表象の世界」の記述内容がマップを考える際に非常に適切であることが分かった。教育にマップを用いることの意味、その効果について大変示唆してくれる文献である。非常に素晴らしい。大変得をした気持ちである。
読書というのはこういう思わぬ出会いがあるから面白い。こちらの意図したもの以外のことで大変に有益なものがある。久しぶりに得た、感動であった。
略図はまた、モノの図であるとはかぎらない。ブロック図や流れ図、あるいは家系図のような、ものごとの関係を表した樹木図の場合もある。ただし、大切なことは、単なる図表や標識ではないことである。図表というのは、表すべきことがきまっており、背後のモデルや現実世界に対する吟味の出発点ではなく、むしろ、「結果」の標示に過ぎない。(「ああそうですか。よくわかりました」で終わるのが図表であり、「ここを変えるとどうなるか。あそこをなくすとどうなるか。ここを極端に大きくするとどうなるか」などの変形や操作、あるいは「あちらから見るとどう見えるか。この眺め(view)はどこから見たものか」といった視点の移動などをして吟味してみたくなり、そうやった結果どうなるかがただちにわかるようになっているのが略図である。つまり、推論や解釈の結果の簡潔な標示ではなく、まさに探求の出発点というのが略図なのである。)