『デジタル社会のリテラシー』

デジタル社会のリテラシー―「学びのコミュニティ」をデザインする

デジタル社会のリテラシー―「学びのコミュニティ」をデザインする

 情報リテラシーは、人間が情報を処理したり利用したりするプロセスに注目し、情報を探すこと・活用すること・発信することに関するスキルを身につけることをねらいにしている。
 メディアリテラシーは、人間がメディアを使ってコミュニケーションする営みを考察し、メディアに関わる諸要因(文化・社会・経済)とメディア上で構成される意味の関係を問題にしている。
 技術リテラシーは、情報やメディアを支える技術に注目し、その操作および背景にある技術的な仕組みを理解することを重視している。(p71)

 学ぶ側に実質的なメリットを提供するためには、この三つの領域のリテラシーを統合的に扱う必要がある。(p81)

 フレイレが考え出した方法は、成人識字教育の世界では革命的なものであった。リテラシーを学ぶことは、彼によって、文字を覚える学習から、文字を使って世界との関係性を取り結ぶ教育に変わったのである。
 これにより、リテラシー教育は、教育学的な内在論理を得ることになった。それまでのリテラシー教育は、近代国家を支えるための人材を養成するために行われてきた。学習者が「なぜ、私は読み書きを勉強しなければいけないのですか?」と問えば、「立派な大人になるため」とか「お金をちゃんと稼ぐため」という外在的な動機しか提示できなかったのである。フレイレの提起したリテラシー教育では、「それを学ぶことは、あなたがよりよく生きることにつながっている」というメッセージが学習内容に織り込まれているのである。(p95)