読書ノート

りかさん

りかさん

梨木香歩のファンタジーを久しぶりに読んだ。学校の図書館の書架でふと見つけ、ぱらぱらと少し読み始めたらぐいぐいと引き込まれたので、借りてきて読み終えた。これはいい作品だ。

リカちゃん人形の代わりにおばあちゃんから送られてきた市松人形の「りかさん」。これが主人公のようこちゃんと会話もでき、不思議な力を持っている人形だった。リカさんが来てから、ようこちゃんも不思議な力に目覚め、人形たちの声や思いが聞こえるようになる。人形は所有者や周りの人々の思いを吸い込み、人々の心を落ち着かせるのだ。必然的に人形の声を聞いていると、その周囲にいた人々の思いを聞くことになる。ようこちゃんはりかさんとおばあちゃんとともに、それらの思いに整理をつける活動をする。

私はこの小説に非常に親近感を持てた。別に幼児期にお人形さん遊びをしていたわけではないが、人形への感情移入というのは私の感性に近いものがある。そういえば、我が家にはぬいぐるみはあっても、人形はないなぁ。

もう一つ、この小説で好感が持てたのは、おばあちゃんと孫のようこちゃんとの会話である。おばあちゃんはようこちゃんに対して、一人前の人間としての言葉遣いをする。決して子ども扱いの言葉遣いをしない。これがとてもいい。もちろんようこちゃんはおばあちゃんの言葉の全てを理解できない。しかし、それが未知の世界への憧れと関心につながると思う。おばあちゃんの言葉はとてもいい。一時代前の日本の習俗をそのまま語る言葉はとても心地よい。