口頭試問終了!

 今日は、先日書き終えて提出した私の博士論文についての口頭試問が行われた。夕方の18時30分からである。このためにどれだけ準備してきたか……、と言いたいところなのだが、実はほとんど準備ができなかったのだ。
 博論を提出したのが3週間前。それから1週間はほとんど「リハビリ」に費やされた。年末年始のおよそ10日間、私はひたすら草稿の修正をしていた。睡眠時間などという概念が存在するのか思い出せないほどの日々の連続もあった。そうやって何とか書き上げた後は、ただただ通常の生活に自分を慣らすための時間が必要だった。よって、1週間はほとんど何もしていなかった。
 次にやってきたのは授業の準備の嵐である。センター試験前まではまだ良かった。選択型の問題はとにかく正解にたどり着く道筋を示すことができればよい。授業はその道筋を示していくのだ。だが、それが終わった後の二次対策授業はまさに自転車操業の連続する毎日だ。明日の授業の準備を今日行い、授業が始まるまではその授業で話すべき内容をもう一度確認する。しかしそれはその日の授業1回だけで終わり、もう次のクラスで使うことはない。毎日毎日、授業を一つ構成してはそれを使い捨て続ける、という消耗戦に突入しているのである。しかも扱っているクラスが東大対策のクラスだ。問題のレベルは本当に高く、それを生徒に噛み砕いて教えるのは難儀である。それと毎日闘っている。とても他の作業に時間を振り分ける余裕がなくなった。
 それでも、今日の口頭試問でフリーズするわけにはいかないので、何とか時間を作って、自分の研究を説明するための資料を作成し、試問ではそれを読み上げた。そうでもしないと、自分の研究について思い出しながら説明するだけの余裕が自分にあるとは思えなかったのだ。事実、今日は朝からずっと動悸が激しかった。睡眠不足のせいかと思ったが、もしかしたら緊張のせいかもしれない。準備不足を意識するとき、私は一番緊張する。だからこそ、授業でもそこまで必要ないと思うところまで準備して臨む。しかし、この肝心の口頭試問に対する準備が一番不足していた。
 幸い、口頭試問自体は予想よりは厳しいものではなかった。担当してくださった先生方に助けられたようなところがある。幸いにも私の研究をずっと見てこられた先生方ばかりであり、その先生方からの最終確認、という感じだった。時々鋭い質問を浴びて、しどろもどろになって答える場面があったけれど。しかし、試問を受けているうちに私も次第にリラックスしてきて、口が良く回るようになった。それまでは本当に頭が朦朧としていて、今日はまともに話せるのかと心配だったのだ。
 とりあえず、口頭試問は終わった。結果はすべて任せることにしよう。ともかく3年間、私は生き延びたのだ。試問に向かう路上で、この3年間の自分の歩みの意味をずっと考えていた。何かをあたらしく発見しよう、というよりも、私は研究することのスキルとスタンスを身につけようとしたのだ。それは、まだ不十分ではあろうが、ある程度獲得できただろう。それをこれからどのように継続し、伸ばしていくか、頑張りのしどころである。
 更に、大きな宿題も課せられた。博論の誤植をすべて直すという宿題である。これは、他の仕事を抱え込んで多忙な我が身にとっては予想外の大仕事である。だが、何とか取り組んでいくしかあるまい。私が3年間、精力を注ぎ込んだ研究の集大成だ。せめて形だけはしっかり整えてやりたい。