外務省官僚の講演会があった

 今日の試験後に1年生の進路講演会として、外務省の官僚の方を招いて講演会があった。現役外務省の官僚の話が聞けるなど、早々めったにある機会ではないので、喜び勇んで聞きにいった。いやぁ、期待を上回るというか、さすがにというか、素晴らしい講演会だった。
 外務省の官僚と聞いたら、さぞかしいかめしい方なのだろうと思ったら、現れたのはまだ30代の若々しい方だった。しかも、非常にざっくばらんな態度で話してくださった。それもそのはず、中高一貫校を経て東大に進んだ方だが、大学時代はほとんどを外国で旅行していた、ということだった。しかもそれは南米や東南アジア、インドなど第3世界の国々ばかり(ご本人の言葉に寄れば「貧しい」国々)である。これは、バイトで貯めたお金で旅行に行くので、豊かな国ではお金が持たないためであろう。とにかく世界を見たい、という思いで行かれたそうだ。そんな方が話す話しだから、ご本人の経歴はもうすごいの一言なのだけれど、その話しは非常に身近で、親近感があり、ざっくばらんで、それでいて進路選択をしなければならない1年生に非常にタイムリーな内容のものだった。いやぁ、これはすごい。
 講演の内容は、半分くらいがご自分が中高生時代にどのようにして理系・文系を決めたかだった。ご自身は国際関係に興味があったのだが、進路は得意分野である理系へと進んだ。しかし、それを一番後悔している、とのことだった。そして、進路は得意なものを選ぶのではなく、自分の好きなものを選ぶべきだと話された。
 そしてその後は外務省での仕事の内容を話された。といっても公式な話しではなく、ご自分が経験している外務相という場での仕事の面白さややりがいを語られた。政府専用機に乗ったときのエピソードやホワイトハウスでの様子などミーハーな話題から、官僚として国のために、国民のために働くとはどういうことかを、地に足の着いた言葉で語られた。要は、自分が歴史のページをめくる瞬間を動かしているのだ、ということ。そのやりがいのある、自分の好きなことを仕事としていることで、それが国のために、国民のために働くことになるということ。つまりは自分の好きなことを追求するのが一番だ、という話しであった。
 最後にご自身が留学していたスタンフォード大でのスティーブ・ジョブズの卒業式講演での言葉を引用され、「Stay hungry,Stay foolish」を挙げられた。なるほど、この言葉は今回の講演の内容によくマッチしたものである。
 いやはや、私が8年間本校で聴いた講演の中で、今回のものは文句なしに最高のものである。こんなに生徒を勇気づけ、励まし、世界に目を向けさせ、それでいてご自身は威張るでもなく、誠実に身近に、親しみやすく分かりやすく、聴く者の心に火をつける講演は聴いたことがない。素晴らしい講演だった。今年一番の成果である。