フェルメール展鑑賞

 5日の金曜日は日中は何も予定がなかった。ずっとホテルにこもって仕事をしようと思っていたのだが、ロビーにあったパンフレットで、まだフェルメール展をやっていることを知った。せっかく東京に来ているのだし、フェルメールは私の大好きな画家の一人だし、ということで、私には珍しく、午前中をかけて上野まで出て、東京都美術館でのフェルメール展に行ってきた。
http://www.tbs.co.jp/vermeer/jpn/index-j.html
 行ってみて驚いたのは、その入場者の多さである。私は午前10時過ぎに並び始めたのだが、その時点ですでに30分待ち。私が出てきた12時頃では60分待ちの行列である。平日の金曜日なのだが、いったいどこからこんなに人が来るのだろう。まあ、東京だからね。
 最初に人の多さに度肝を抜かれたが、次に驚いたのはやはり「本物」の迫力である。私の自宅の机の前にはフェルメールの絵によるカレンダーがかかっている。毎日彼の絵を眺めているようなものだが、やはり本物は違う。小さな絵が多い彼の作品だが、その筆致の精妙さといい、光の表現の巧みさといい、とにかく素晴らしい。
 フェルメールだけでなく、デルフトの画家たちの作品をいくつか集めていて、これらもまた非常に素晴らしいものだった。光の当たる箇所と逆光の箇所の表現を巧みに用いて画面にドラマを作り出す彼らの作風は非常に説得力がある。
 今回は、近年フェルメールの作品だとわかったという、彼の唯一の宗教画「キリストとマリヤ・マルタ」の絵が素晴らしかった。展覧会の最初から、デルフトの画家たちの光の扱い方を実例をもって教えられてきた目には、キリストとマリヤとマルタの3人に対する光の扱い方がそれぞれの特徴をよく表していて、興味深かった。キリストには正面から光が当たっているが、マルタには光と影が半々になっていて、彼女のこの場面での悪の面を表現している。マリヤは主の足下に座っているため、顔は全部陰っている。それが、彼女の従順さを表しているようだ。
 たっぷり2時間、堪能して外に出てきた。
 実はここでは、もう一つの素晴らしいものを見た。上野公園について美術館に向かうとき、公園の銀杏並木から黄色い葉が次から次へとまるでシャワーのように落ちてくるのだ。少し風があったせいだが、本当に「黄色」が降り注いでいるようで、とても美しかった。非日常的な風景だ。美術館を出た後も、少々強い風に吹かれて枯れ葉が舞っている公園の様子がとても風情があったので、思わずこの場所で昼食をとった。
 上野にはすぐ近くに東京芸大がある。彼らはこんな美しい場所で、日夜芸術と向き合っているのだね。上野は芸術の拠点となっているのだ、と改めて思った。卒業生も芸大に通っている。うーん、うらやましいぞ。