『源氏物語の時代』

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

 たった今読了。本当にすごい本だ。再三にわたり紹介しているが、現実の一条天皇の時代を、歴史書や文学作品や貴族の漢文日記などの資料を駆使して、まさに今そこにその時代があるかのように物語ってくれる。一条帝の時代がこんなにも豊かなものであり、一条帝と定子との愛の形がこんなにも美しく切なくはかないものであり、一条帝と彰子との関係がこんなにも痛ましくてけなげで美しいものだとは知らなかった。そうした、古典文学に頻出する人々の実際に生きた姿を、本当に生き生きと、まざまざと知らせてくれる。真に希有の本である。読み終えるのが惜しい本だったが、同時にきちんとした形で読み終えたいとも思わせる本だった。自宅の自分の机の前で、最後をしっかり読ませていただきました。

彰子の心の目には、微笑ましいほど真面目な一条の姿がいつまでも焼きついていた。私はそう信じている。

 この最後の一文が「ぐっ」ときた。最良の学術書でありながら、感動の涙が出そうになる本はそうはない。この本は、そうした本だった。
 この本を生徒に薦めたいのだが、さて、読書レポートの課題書にできるかなぁ。1,300円+taxというのが少々気になる……。