『沼地のある森を抜けて』

沼地のある森を抜けて

沼地のある森を抜けて

 久しぶりの梨木香歩の小説である。帯には「『からくりからくさ』に連なる、命のものがたり。」と書いてある。まあ、命のものがたりには違いないだろうが、『からくりからくさ』とは少々違うような雰囲気を持つ小説だった。
 原初の生命が有性生殖を始めた時をテーマにした展開であった。悪くはないのだが、最後のあたりが今ひとつ不完全燃焼というか、書き込みが足りないというか、今ひとつの感じを受けた。また、3つの「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」と本編との関連が今ひとつはっきりとしなかった。しかし、読んでいる最中は謎解きのような感じがして、面白く読めた。