『獣の奏者 II 王獣編』

獣の奏者 II 王獣編

獣の奏者 II 王獣編

 2回目の読了。今回も、じっくりと本文をなめるようにして読み進めていった。自らの意に反して王獣を武器として使わなければならない立場に追い込まれていくエリンの悲しみ、さらに決定的な隔たりを持ってしまったリランとの関係、その中で、困難の渦中にあって互いの理解を少しずつ深めていくイアルとエリン、そして、ラストにおいて、エリンが悲痛な思いで自らの最期を悟った時、思いもかけずにリランが彼女を助けに来てくれる。「あなたの心が知りたくて、知りたくて」というエリンの思いは、この『獣の奏者』全編に渡るエリンの思いでもあろう。決してかつてのような全幅の信頼関係が回復されたわけではないものの、新たな関係を築き上げる、その予感をたっぷりと感じさせて物語は終わる。もう、このラストには何遍も涙を流させられる。
 困難はまだ続く。第3巻では新たな立場にエリンは立たせられる。そうではあるが、未来に希望の光を見いだして歩き出そうとするエリンの姿は、大変に示唆的である。