福岡伸一「世界は分けても分からない」

 講談社のPR誌『本』というものがある。ここに6月号から福岡伸一氏が連載をしている。今日、9月号が出入りの本屋さんから届けられた。私はこの連載の大ファンである。と言うより、福岡伸一氏の文章のファンと言っていい。この方は分子生物学者なのだが、驚くほど達意の文章の書き手である。分子生物学の話を、世界を、きわめて身近にわかりやすく語ってくれる。私はこの連載があることを途中から知り、わざわざ本屋さんに無理を言ってバックナンバーを取り寄せたほどだ。
 9月号はコンビニのサンドイッチ等に入っている食品添加物ソルビン酸についての話。この保存料が生体にどのように働きかけるのか、どのようにして微生物の繁殖を防ぐのかが、きわめて専門的に具体的に、それでいて平易にわかりやすく語られる。もう、最高の経験である。
 と同時に、福岡氏は科学の限界をもちゃんと明らかにする。我々にはまだまだ分からないことがたくさんあることに気付かせてくれる。科学者として非常にナチュラルな立場からの物言いに、読後爽快感を覚える。
 まだ4回目だから単行本かはまだ先だな。でも、もはや今から楽しみである。