『源氏物語の時代』

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

 昨年、同じ朝日選書の『検定絶対不合格教科書 古文』を購入した時に、この本も購入しておいた。「一条天皇と后たちのものがたり」という副題で、一条帝期のことを知ることができるかと思ったのだ。そして、最近この本が何かの賞を受賞した。そこで、今回初めて繙いてみた。
 いやぁ、これは凄い本だ。一条帝とその周辺の出来事がまるで実況中継をされているかのように実にリアルに語られている。しかもそれは『日本紀略』『大鏡』『栄花物語』『小右記』などの史料を十分に参照して構成している内容だ。これは凄い本である。一条帝期が、これらの資料を基にかなり詳細に再現できる数少ない時代だということも初めて知ったし、昨年古典講読で教えていた内容がまざまざと思い出せるものもあり、非常に面白い。花山院の出家の内情など、大変に興味深い。
 さらにこの本の出来方が凄い。著者の山本淳子氏は高校の教員もされていた方のようだ。その後、京都大学大学院に進まれ、博士号を取得した。そして、旦那様が日本史の高校教員で、その方に、史実を踏まえた副読本が欲しいとの意向を受けて執筆をされたらしい。大変な勉強家とお見受けする。本書に盛り込まれている史料は超一級で、その数は膨大だ。いやぁ、こんな方がおられるのだねぇ。
 午前中に病院に行き、その待合室で読み始めたのだけれど、どんどん引き込まれていった。
 下の本も大変参考になる、素晴らしい本だ。私の古典の教材研究の大事なタネ本である。
検定絶対不合格教科書古文 (朝日選書 817)

検定絶対不合格教科書古文 (朝日選書 817)