読み聞かせの方法を教え終えて

https://www.youtube.com/watch?v=fJMwhxVjyh4
メム・フォックスの読み聞かせ

 先週の言葉指導法Ⅱの授業で、3つの読み聞かせ方法をほぼ教え終えた。通常の読み聞かせ、考え聞かせ、対話読み聞かせを比較するために変則的な進度計画だったが、とりあえず3つのクラスにいっしょ読みを含めた読み聞かせ方を全て伝えることができた。今週、学生たちは幼稚園実習に行っている。その直前ではあったが、読み聞かせ方法を伝えることで、少しは実習での読み聞かせを行うにあたり、学生たちにヒントや考えさせる材料を提供できたのではないかと自負している。

 学生たちのふりかえりをずっと読んでいた。いっしょ読みを紹介したクラスでは、「子どもと一緒に声を出して読むことで、絵本の世界に引き込まれやすくなるし、楽しく読めるようになる」といった感想を持った学生が多かった。いっしょ読みの特徴をよく捉えた感想だと思う。

 また、日本と欧米の読み聞かせの比較を紹介したクラスでは、「欧米の読み聞かせ方(メム・フォックスの読み聞かせ)は演じすぎず、声色や抑揚が使われ、音楽のように読んでいて、絵本の世界に入りやすく、楽しんで聞ける」という感想を書いた学生が多かった。これまた特徴をしっかりとつかんでいて、良い感想だと思った。総じて、彼らは個々の読み聞かせについてよく反応してくれ、それぞれの長所をよくつかんでいた。考え聞かせが相変わらず難しいという感触を多くの学生が訴えており、「考え聞かせをいかにわかりやすく習得させるか」という、私の次の課題が明確になった。これもまた嬉しいことである。

 と同時に、危惧もまた覚える。いっしょ読みを紹介したクラスでは「この読み方が自分には一番合っていると思う」という感想が出ていた。まだ彼らは、3つの読み聞かせ方法のどれが自分には合い、また合わないか、という視点でしか捉えていないと思われる。私が3つの読み聞かせ方法を紹介するのは2つの理由がある。

  1. 通常の読み聞かせ方だけではない、様々な読み聞かせ方があることを知ってほしい
  2. その様々な読み聞かせ方の特徴を掴み、目の前の子どもたちの「言語援用能力」を伸ばすために、場面や自己の計画・目的に沿った読み聞かせ方を選択できるようになってほしい

 先週までの授業で、1番目の目的はほぼ達成できたと言っていいだろう。しかし、2番目の目的はまだまだ達成できていない。これを達成するのはとても難しいことだ。

 確かに、授業の内容が3つの読み聞かせ方の紹介であったため、学生たちの意識が方法にとらわれてしまうのは仕方のないところである。しかし、折につけて「大切なのは読み聞かせをする目的である。子どもたちのどんなことを伸ばすことを目的とし、その目的の達成に一番ふさわしい方法を選択できるようになろう」と言い続けてきた。その甲斐あってか、日欧比較のクラスでは「子どもたちの年齢や状況にあった読み聞かせをしていきたい」という感想を書いた学生が数人いた。私の願いとしては、こうした感想を持つ学生が受講者の大半を占めてほしいことだ。そうでなければ、3つの読み聞かせの方法も単に珍しいやり方、という理解だけ終わってしまう。あるいは、自分はこちらが得意で、そちらは不得意だ、という自分を中心とした方法の選択になってしまう。これは私の本意とするところではない。

 読み聞かせについては、実習明けにあと2回を予定している。1回は紹介した読み聞かせ方から1つを選び、友人たちと相互に実演させる。残り1回は3つの読み聞かせ方についてレポートを書かせる。このレポート書きの際に、もう一度「目的を重視し、それに合った方法を選択する」ことの重要性について、声を大きくして訴えようと思う。それが届かなければ、私の授業は失敗である。