ファシリテーション・グラフィックのスキル向上のために

 私が担当している1年生の授業「言葉指導法I」では、「子どもの言葉の発達と援助」と題して、人が生まれてから幼児期に至るまでの期間に言葉がどのように発達していくかを講じています。人が言葉を獲得していく過程はなかなかにスリリングです。言葉など全く話すことも使うこともできなかった存在が、様々な資質を用い、外部の環境と応答していくことによって、言葉を獲得していきます。そのスリリングな様を、学生と一緒に体験している真っ最中です。
 しかし、90分の授業の全部をその探究に向けていては、いくら興味深い内容といえどもお腹がいっぱいになってしまいます。そこで授業の後半(およそ40分間くらい)は、今日話をした内容を踏まえた課題を出し、それについての対処法を学生同士でグループを組んで話し合わせています。昨年まではこの話し合いの際に、オピニオン・ペーパーを使ったり、単純に話し合わせたりしていましたが、今年は最初からファシリテーション・グラフィックをやらせています。3〜6人のグループを組ませ、1グループに模造紙を1枚ずつとマーカーセットを1つずつ渡し、一人がマーカーを1本持つようにします。そして、設定した課題について話し合い、出てきたアイデアや自分の意見、他人の意見を模造紙に自分で書き込ませます。ややメンバーチェンジのないワールドカフェのようなやり方ですね。
 これまでの経験からすると、このファシリテーション・グラフィックをさせても、なかなか模造紙1枚を埋めるほどのメモを残すことができないでいました。しかし、今年の1年生はほぼどのグループも模造紙全体を埋めるほどのメモを書き出します。さすがに入学前教育でワールドカフェを経験している世代だなぁと思ったりします。
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 今日は、その2回目だったのですが、学生たちは喜んで模造紙にメモを書き込み、話をしていました。今日は時間的な余裕が少しあったので、10分程度話し合った後で意見をまとめさせ、それを3〜4グループに発表させました。良い意見、やや的の外れた意見などが出され、私のコメントのしがいがありました。
 ファシリテーション・グラフィックは一つのスキルです。決して魔法の杖ではありません。これを使えば意見交流が(ない時よりは)活発化します。しかし、1度使ってすぐに効果が現れるわけでもないでしょう。スキルなのですから、熟練が必要です。そのためには何度も何度も試してみて、成功や失敗の経験を重ねて、徐々に身につけさせていくほかはありません。昨年までの授業では、多くてせいぜい2〜3回しか学生に経験させていませんでした。今年は3回目の授業ですでに2回経験させています。なるべく多くの機会に経験させて、スキルを上げさせていこうと思っています。