「読書へのアニマシオン」の模擬授業見学


 3週間前くらいから、新潟大学教育学部の足立幸子先生の授業を見学させてもらっている。この授業は中等教育向けの国語科指導法で、今は学生(3年生)に模擬授業をさせている。50分間の授業を丸々やらせ、残りは授業検討会である。これは贅沢な授業だ。現場での授業さながら50分間の模擬授業ができるのがまず素晴らしい。私がかつて教育実習事前指導を担当していたとき、担当時間数の関係で模擬授業を最初の20分間くらいしかさせてやれなかった。それに比べると、1コマ丸々授業できるのは良い。もっとも、学生数が多いのでTTの形態をとらざるを得ないようだが。

 先週の模擬授業は「読書へのアニマシオン」を取り上げていた。これがすこぶる楽しかった。読書へのアニマシオンはどうもとっつきにくい気がしていたのだが、やはり可能性のある教育活動なのだと実感できた。

 授業では宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を取り上げていた。事前に生徒役の学生に本を配布し、読んでくるように指示されていた。当日の授業で行われたのは「作戦15 質問合戦」である。各自が持参してきた質問をグループで絞り、グループごとに他のメンバーへ質問を出す。解答者はグループ内で指名される。そして、①解答者自身が解答できたら+2点、②グループで相談して解答できたら+1点、③無答または誤答は0点、で競っていくという。なかなかよくできたルールである。歴史のある活動だから、当たり前か。

 学生たちは乗っていた。進行する教師役の学生のフリが上手で、よく場をファシリテートしていた。終盤は少し飽きてきた雰囲気が漂い始めたが、それでも7グループが1つずつ質問を出し、楽しく終わった。

 学生が考えた質問例は下記のようなものだった。

  1. 作品全体を通して銀河鉄道には何人乗ったか?
  2. ジョバンニの銀河早見図を飾る植物は何か?
  3. カムパネルラが忘れた2つのものは何と何か?
  4. 作品中に出てくる賛美歌は何番か?

 これらを聞きながら、この作戦においてどんな力を養おうとしているのか、考えていた。1番目はストーリー全体を見通す力、2番目は描写の細部に注目する力、3・4番は場面を想起する力、あたりだろうか。当然のことだが、「推測する」「解釈する」などを用いる、答えが定められない質問(オープン・クエスチョン)を扱うにはこの作戦では無理だということがわかる。逆に言えば、この作戦によって養える力を意識し、それを養えるよう授業を構成すべきなのだろうし、評価規準もそこに置くべきだろう。

 質問づくりの活動とは、この作戦はどんな関係になるのかな? アニマシオンの作戦を読解方略から整理し直したら、どうなるのかな? そんな研究はもうあるかな? などなど、楽しくいろいろなことを考えていた。