何が話し合いを活性化させるのか?
非常勤で教えている短大での授業があった。『ギヴァー』のブッククラブを行っている。1冊を4回の授業で扱うこととし、事前に指定された範囲を読んできて、授業中は本の内容について自由に話し合いをさせている。読書会形式のリーディング・ワークショップである。昨日は、その4回目。いよいよ『ギヴァー』の最後の場面を扱うことになる。
正直言って、このブッククラブの授業は失敗だったと思っていた。今までの3回、残念ながら学生たちはあまり話し合いをしなかった。中には活発に話し合っているグループもある。しかし、多くはあまり話し合いが活発ではなかった。まず、事前に読んでくる者が少ない。読んでこなければ、そりゃぁ話し合いも進まないよね。話し合いとして割り当てていた時間中にようやく本を読んでいる者が結構いた。また、話し合っていたとしても、事前にしっかり読んできた者の話を周りが感心して聞いているグループもある。私は昨年、同じ形式で本学の学生に対してブッククラブを行った。その時も、確かに話し合いに乗っていないグループはあったし、読んでこなかった者もいた。しかし、130名の大半がしっかり読んできてくれ、話し合いをしているので、そうした学生やグループは少数派であり、あまり目立つことはなかった。また、周りがしっかり読んできて話し合いをしているので、最初は読んでこなかった者も次はしっかり読んできたりしてくれていた。だが、読んでこない者、話し合いに参加しない者の方が半数ほどいるのではないかと思われるクラスの場合、そうした自浄作用は働かない。この3回の授業、どうやって話し合いを活発にさせるか、ずっと悩んできた。彼らは、ふりかえりには、よく話し合いができたとか、面白い内容だったとか書くんだけれどね。
しかし、この4回目の授業は違った。大半の者が活発に話をしていた。もちろん、まだ話し合いに乗ってこない者・グループはある。しかし、少なくとも半数以上の学生は話し合いをしており、見た目は活性化されたように思う。果たして何が違うのかな? 今回の授業で、これまでとは違うとしたら次の条件だ。
- 扱う範囲が小説のラストであり、これまでの謎がかなり明らかになる。(無論、まだ謎は残るはずだが)
- 前回、「よい話し合いの条件」を確認した中で、「甘いものがある」を紹介したので、今回はお菓子持参を許可した。学生たちは結構お菓子を持ち込んでおり、食べながら話をしていた。
- 今回はBGMをかけた。琴によるJ-Popのもの。今まで、ジャズのBGMをかけた回があったが、その時とは違って親しみのあるメロディだった。
異なる条件としては、以上である。これらが複合的に作用したのかな? うーん、謎である。ただ、2と3の条件はやはり意味が大きいのかもしれない。確かに今回は、話し合いをする雰囲気がゆるいもので、まさにカフェにいるときのようなリラックスした感じを醸すことができたのかもしれない。
もしそうだとしたら、彼らは予想以上に学習に対する思い込みに縛られているのかもしれない。学習するにはしっかりと机に向かって教師の話を聞かなければならない、という思い込みである。その思い込みから、自分自身がなかなか離れることができないために、自由な発想や話し合いが阻害されていたのではないか。今回は、まるで授業ではないような雰囲気を多少は作り出すことができたのだろうか。だからこそ、普段の素直な発想や話し合いを引き出すことができたのだろうか。
うーむ。だとしたら、彼らに対する見方を改めなければならないな。もしかしたら、彼らは決して話し合いに乗ってこなかったのではなく、話し合いをするための条件が整わなかっただけなのかもしれない。つまりは、今までの授業の構造が彼らの能力の発揮を押さえ込むフレームを持っていたのかもしれない。うーん、これをどうやって証明できるかな?
今回読んだ本。(もう何度も紹介済みですね)
- 作者: ロイスローリー,島津やよい
- 出版社/メーカー: 新評論
- 発売日: 2010/01/08
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- アーティスト: 宮西希
- 出版社/メーカー: 日本クラウン
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