自分の物語を書くことの喜び

 出講している短大で、ライティング・ワークショップを実践している。最初の課題として短編の物語を書かせている。先週は物語の設計図となるプロットとあらすじをまずは考えることを教え、授業内で30分の時間を取って作業に当たらせていた。学生たちは、外から観察している限りでは勝手気ままに私語に興じているように見えた。しかし、そうではなかったことが、彼らのふりかえりを読むことでよく分かる。
 この授業でも大福帳を活用している。その大福帳に記された彼らのふりかえりの抜粋を載せる。

  • 外に散歩に行くことにより良い案が浮かび、充実した授業になりました。また、この授業を楽しみたいです。発表がうまく行くように、楽しいストーリーを書きます。
  • 前回のリレー物語はみんなで書くから考えられたけど、一人で物語を考えるのは大変だなと思いました。プロットを組み立てるの難しいです。作家の人すごいなと、今日考えて思いました。
  • 3匹のかわいいオオカミの読み聞かせとても良かったです。文章を考えていると、いろんな想像が膨らみ、とても楽しかったです。
  • 短編制作をしました。お話を作ることはそこまで得意じゃないはずでしたが、思ったよりぷんぷか発想が出てきて、自分でも感動しました(笑)。楽しかったです。
  • 自分で物語を作るためにはプロットが大切だとわかりました。物語の流れやどういうお話にするか、全然思いつかなくて大変でした。家に帰ってじっくり考えようと思います。
  • どういう作品を作ろうか悩んでいたが、意外とお題が出てきて作るのが楽しみになってきました。どんな仕上がりになるか楽しみにしていきたいと思います。
  • 今日の先生の読み聞かせとても引き込まれました。声色を役によって変えていて、とても面白かったです。またぜひ何か読んで欲しいです! 物語作り頑張ります!
  • 『3匹のかわいいオオカミ』というお話は、私の知っている「三匹の子ブタ」とはまったく違う物語でおもしろかった。プロットを考えるのは大変だけど、物語を作るうえで大切なことなのでがんばる。
  • 物語作るのは難しいですね。外へ行ったらアイデアがポポポポーンと出てきたので、よかったです。来週までに完成させなければいけないので、がんばって仕上げてきます。
  • 3回目まして、こんにちは! お話考えました。さっそく打ち込もうと思います。3匹のかわいいオオカミ、いいお話ですね!! 先生の読み聞かせ上手すぎてびっくりしました!
  • 今回は、個人作業でプロットと物語の構造を考えていました。ザックリとしたものはできているのですが、細かい設定を考えるのがとても時間がかかりそうです。
  • 物語を作成するためのプロットと物語の構造を考えるのはとても楽しかったです。ジャズを聴くことで作業への取り組みにとても良く集中できました。
  • ステキな短編を書けたらいいなと思います!!
  • 3匹のかわいいオオカミの絵本がとても面白かったです。視点が変わると物語の雰囲気が一変することに驚きました。物語書くのが少し楽しくなりました。
  • 読み聞かせの本、とてもおもしろかったです。自分で内容を考えてみると、絵本や小説などを書いている人はすごいなと思いました。頑張っていきたいです。
  • 短編小説のプロットを書いてみると簡単に書き進めることができて、安心した。来週までに完結させたい。早く書き終えたい。
  • 物語を1から自分で作るのは想像以上に大変で、プロットを書くのに一番時間をかければ、よりよい物語が書けると思うので、プロットを一番がんばりたいと思う。
  • こんにちは! 今日もよいお天気ですね。短編が、長編になってしまいそうです。A41枚程度じゃ収まらなくないですか? 長くなったら減点ですか?
  • 自分の短編集を書くことはないので、難しいけど、みんなが面白いって思えるようなお話を作りたいと思った。Reライトを書きたいので、たくさん探して、完成させようと思いました。
  • プロットを考えるのにけっこう苦戦したが、考えるのはけっこう楽しかったです。何とか登場人物のところは出来たので、がんばって書き終えたいと思います。
  • プロットはいい感じに考えられたので、物語にするのが楽しみになった。あまり長くならないように調整するのが難しそうなので、がんばりたい。
  • 今日はプロットと設計図を書きました。普段お話を組み立てることってなかなかないですが、自分の好きなお話の続きを、自分が作ることにワクワクしました。今日、完成できそう。ジャズ、いいですね!
  • めっちゃいい話が書けてきた。書きながらもちょっとドキドキした。クライマックスがまだ途中だから、頭を悩ませながら、みんなが楽しめる話に仕上げたい。

 この授業では、皆がよく知っているお話のパロディを書いたり、好きなお話の続編を書いたりしてもよい、と伝えている。その、よく知っている話のパロディの例として、次の絵本を読み聞かせした。2、3の学生たちが書いているのはそのことだ。

3びきのかわいいオオカミ

3びきのかわいいオオカミ

  • 作者: ユージーントリビザス,ヘレンオクセンバリー,Eugene Trivizas,Helen Oxenbury,こだまともこ
  • 出版社/メーカー: 冨山房
  • 発売日: 1994/05/18
  • メディア: ハードカバー
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 それはともかく、学生たちのふりかえりを読むと、彼らが物語を作ることの楽しみを感じ始めていることがよく分かる。発想することの楽しみと苦しみ、プロットを考えることの面白さと苦労、そして物語として作品を書くことへの楽しみを彼らは少しずつ実感し始めている。その歩みがよく分かる、ふりかえりの文章である。
 正直言って、学生たちが物語の制作にどの程度取り組んでくれるか心配していた。しかし、やはりここでも、それは杞憂に終わりそうだ。彼らは物語ることを楽しみ、喜んでいる。それは、物語の力によるのだろう。そして、その力に学生たちを乗せるために、発想法を教え、リレー物語でお話を書く楽しさに触れさせ、プロットを考える重要さを説いてきた。それらがどうやら実を結んでくれたようだ。
 さて、彼らの作品を読むのは明日。どうなるか、楽しみである。