『ウサギ』の質問づくりの授業

 連休は日・月曜と東京に行き、聖書の学び会に出席してとても充実していたが、それは別件。
 連休明けの今日は、非常勤を勤める高校の授業があった。小説教材『ウサギ』を読解していく、いよいよその中身に入っていく。しかし、今日と明日の2コマをかけて、私は「質問づくり」の授業を展開することにした。参考図書は前にも取り上げた、下記の本である。おそらく、新潟県でこの本に紹介された授業を実践するのはこれが初めてではないかなぁ。(^_^)

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

 この本を東京からの帰りに必死になって読み進め、今日の授業に備えた。何とか今回の小説読解の授業でこの「質問づくり」をやりたかったのだ。
 この本にも書かれているのだが、確かに我々は授業において教師から質問されるばかりで、テキストに対して自分で質問することがなかった。しかし、自分で学ぶためには自分で質問をしなければならない。それが自分自身で自分の学習をコントロールし、自分の疑問を自分で解決するという、学習についてのオーナーシップを回復することの第一歩だろう。人は誰のために学ぶのか。それは自分のためである。そして、自分のために学んでこそ、人はもっとも能力を発揮するし、またもっとも能力を必要とするため、もっとも能力を伸長させることができるだろう。そのために、「質問づくり」はとても良い方法だと思う。
 上記の本は、「質問づくり」の授業の方法と効果がとても丁寧に説明されている。そしてそれは、筆者たちが20年以上にわたる試行錯誤の末に編み出した指導方法・手順だ。まずはこれに乗っかってみるほかない、ということで、ほとんどパクりの方法で今日と明日の授業をデザインした。もちろん、小説を読むという授業に適応させるよう、工夫は凝らしてある。
 「質問づくり」の授業とは、次のような手順を踏む。上記の本より引用する。

  1. 「質問の焦点」は、質問づくりの鍵となる、生徒たちが質問を考え出す起点となる言葉や文章などのことで、教師によって事前に設定されます。
  2. 質問をつくる際の単純な四つのルールが提示され、生徒たちはそれらについて話し合います。
  3. 生徒たちは、ルールを意識しながら短い時間でできるだけたくさんの質問を考え出します。
  4. 生徒たちは、「はい」か「いいえ」で答えられる「閉じた質問」と、自由に考えを述べられる「開いた質問」の違いを理解したうえで、それらを相互に書き換える練習をします。そうすることで、この二つの異なるタイプの質問を、目的に応じて使いこなせるようになります。
  5. 生徒たちは、優先順位の高い質問を一つ〜三つ選択します。ここが、質問づくりのハイライトと言えるかもしれません。
  6. 優先順位の高い質問を使って、教師と生徒たちは次にすることを計画します。
  7. ここまで行ってきたことを、生徒たちが振り返ります。「学んだことは何か?」「どのようにして学んだか?」「学んだことをどのように応用できそうか?」などについてです。

上記掲載書まえがきより

 今日は上記のうち1〜3の手順を生徒たちに行わせた。授業の内容が小説教材の読解であることから、3の質問づくりにおいて、次の工夫をした。

  1. 設定した「質問の焦点」として、次の4つを示した。(1)登場人物の心情を明らかにする (2)登場人物の行動の理由を明らかにする (3)作品の主題を明らかにする (4)表現の特徴を明らかにする
  2. まず個人作業として、個人での質問づくりを15分間させた。
  3. 次にグループで、個人で作成した質問を紹介させあい、記録を取らせ、さらにグループで付け加えるようにさせた。

 55分間という授業時間が埋まるかなぁと心配していたが、杞憂だった。質問づくりのルールを示し、それについて話し合う場面が結構時間がかかった。何しろ初めてのルールである。生徒は自分の考えを出すのにも手間取っていた。また、質問づくりはなかなか面白かった。生徒たちの作った質問は小説を読んでいくうえで的を射たものがいくつか出ているようである。今日の段階ではとにかくたくさん質問を作ることに重点を置いているので、玉石混淆の状態である。しかし、この中から教室全体で問うに値する質問が生まれるだろうし、それが自分たちが生み出した質問であれば、なおさら取り組む意欲が湧くだろうというものだ。
 明日は手順の4〜7を扱う予定である。どうなることやら。新しい授業を創っていく、その現場に立ち会う面白さがある。