外の世界に向く視点を

 先々週から言葉指導法Ⅰの授業では「絵本探究」という学習をしています。これは帝京大学の杉本先生の実践に触発され、先生の実践を私なりに本学の実情に合わせて実施しているものです。
 6種類の絵本を用意し、その絵本のどれか1冊を学生に選ばせ、その絵本について徹底的に探究させる、というものです。こうすることで、絵本そのものや作者・その背景などについて知ることができます。そして、その絵本の1冊1冊には大きな背景があるのだということを実感させることで、学生が子どもたちに絵本を読み聞かせたり、絵本を選んだりするときに、今までよりも心を込めて出来るようになるだろう、ということを意図しています。
 先週までに2回の授業を行いました。そして先週は6種類の絵本の中から1冊を学生各自に選ばせ、その絵本について探究させました。私が彼らに探究させる点として指摘したのは以下の4点です。

  1. 絵本の作者について
  2. 絵本が作られた時代背景について
  3. ストーリーの面白さについて
  4. 絵そのものや本としての特徴・面白さについて

 この4点について取り組ませたのですが、はたと問題にぶつかりました。2番目の「絵本が作られた時代背景について」調べることになった学生の多くが、「その絵本が作られた年代に起こった出来事」を羅列していたのです。
 私は「時代背景」という言葉を使えば、その絵本が作られた時代の出来事が絵本作成に与えた影響や、作者の人生においての出来事が絵本の作成に与えた影響、などについて調べてくれるものと思い込んでいました。しかし、彼らの多くは単純に、「絵本が作られた年代を調べ、その時代に起こった事件や出来事」を調べていたのです。つまりは、絵本との関わり、という視点を彼らが持っていなかったのです。
 これは私にとって少々ショックでした。と同時に、私の指示の不十分さも教えられました。実は『ギヴァー』のブッククラブをやっているときから感じていたのですが、学生たちは『ギヴァー』の内容を現実の自分たちの社会と関連づけて考えるという視点をほとんど提出しませんでした。皆無と言ってもいいかもしれません。そうした姿勢が、この絵本探究の授業でも現れているのかもしれません。
 これは一つの「発見」ですね。そして、それに対してどう対処するか、私の教員としての腕が試されているように思います。