『クリエイティブの授業』

クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST

クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST "君がつくるべきもの"をつくれるようになるために

 吉田新一郎さんから勧められた上記の本を読みました。これは面白い! お勧めです。
 原題は『STEAL LIKE AN ARTIST』(アーティストのように盗め!)で、こちらの方が刺激的ですね。また、本書の内容をよく示していると思います。本書は何かを新しく作ろう、書こうと思うけれど、それは「オリジナルでなければならないのでは?」と考えて手が止まってしまう人(主に私?)にうってつけです。
 本の扉には「芸術とは盗むことだ」(パブロ・ピカソ)、「未熟な詩人はまねるが、熟練した詩人は盗む。無能な詩人は盗んだものを壊すが、有能な詩人はより優れたもの、少なくとも違うものへと変える。」(T.S.エリオット)の言葉を掲げ、創造するとは盗むことなのだと教えてくれます。意表を突く言葉ですが、しかし、多くの革新的なアイディアや創造的な仕事とは、そのように他者の今までの仕事やアイディアを参考にし、自分なりに吸収し編集してアウトプットしたものです。人は他に何の関わりもないものを創造することはできません。人は「無から有を創造する」ことはできないのです。創造にはある元ネタがあり、それをいかに自分なりに取り込んで表出するかにあります。スティーブ・ジョブズスタンフォード大学での卒業講演にもあったように、ジョブズMacを構想したのは、彼が大学でタイポグラフィの勉強を(モグリで)したことが基となっています。人生における点と点はいつかつながりをもつようになる、肝心なのはその点を人生の中にもつことだ、ということではないでしょうか。
 この本の中から、面白い!と思った箇所をいくつか抜き出します。

  • 小説家のジョナサン・レセムがこんなことを言っている。「何かを“オリジナル”と呼ぶやつは、十中八九、元ネタを知らないだけなんだ」p15
  • “ネタ帳”を持ち歩こう。その名のとおり、他人から盗んだネタを記録しておくためのファイルだ。……盗みたいものが見つかった? ネタ帳に記録しよう。アイデアの限界? ネタ帳を開こう。p30
  • 作曲家のニック・ロウは言っている。「まずは自分のヒーローの全作品を作りなおそう」と。といっても、1人のヒーローからまるまる盗んじゃいけない。ヒーロー全員から盗むんだ。作家のウィルソン・ミズナーは、「1人の作家をコピーするのは盗作だが、何人もの作家をコピーするのは研究だ」と言ったのを覚えている。かつて、漫画家のゲイリー・パンターがこんなことを言ったのを覚えている。「君がたった1人の影響しか受けていなければ、君は第2の○○と呼ばれるだろう。だが、100人から盗んでしまえば、“君はオリジナルだ!”と言われるのだ」p44
  • 僕たちがアートを作るのは、アートが好きだからだ。僕たちがある作品に惹かれるのは、その作者に刺激を受けるからだ。突き詰めていえば、フィクションはどれも“ファン・フィクション”なんだ。だから、いちばん大事なのは、知っていることじゃなくて、好きなことを書くことだ。自分のいちばん好きなストーリー、自分の読みたいストーリーを書こう。人生や仕事も同じ。筋書きに迷ったときは、こう自問すればいい。「どうすればもっといいストーリーになるか?」p55
  • 今、僕はどの仕事でもこの方法を使っている。僕の仕事場にはデスクが2台ある。1台がアナログ用で、もう1台がデジタル用。……君も試してご覧。オフィスがあるなら、作業スペースを2つに分けるんだ。1つはアナログ用で、もう1つはデジタル用。アナログ・スペースでは、エレクトロニクス類はいっさい禁止だ。1000円持って近所の店の文房具コーナーに行き、紙、ペン、付箋紙を見つくろってこよう。アナログ・スペースに戻ったら、さあ、図工の時間だ。紙に落書きをして、切り貼りしよう。作業中は座っちゃダメだ。紙を壁に貼って、パターンを探す。デスクに広げて、えり分けよう。p68
  • 僕が少ない人生経験で学んだことが1つある。本当にうまく行くのは“副業”のほうだということだ。僕の言う“副業”というのは、今まで気ままにやっていると思っていたこと、単なる遊びでやっていると思っていたことだ。本当に大切なのはそっちだ。魔法が起こるのはそのときなんだ。たくさんの仕事を同時進行させて、気ままに切り替えられるようにしておくといい。こっちの仕事に飽きたら、あっちの仕事へ。あっちに飽きたら、こっちへ。“ぐずぐず”をエネルギーに変えよう。p73

 読んでいて勇気づけられる言葉がポンポンでてきます。ワクワクしてきます。私などは単純ですから、さっそく学校で余っている机を1つ調達して自分の研究室に置き、アナログ用とデジタル用に作業場を分けました。このアナログ・スペースで、これからどんな仕事ができるか、楽しみになってきます。
 この本を読んで、筆者のファンになりました。そこで、筆者の次の著書を入手しました。

クリエイティブを共有!  SHOW YOUR WORK!

クリエイティブを共有! SHOW YOUR WORK! "君がつくり上げるもの"を世界に知ってもらうために

 また、吉田さんは、「PLC便り」というメールマガジンで次の本も勧めておられました。私はさっそく注文しました。
逆転の教育: 理想の学びをデザインする

逆転の教育: 理想の学びをデザインする

 人から本を紹介してもらうのは、良書に出あう有効な方法の一つです。良い読書ができそうです。