『ギヴァー』のブッククラブの授業終了!

 先々週の11月9日(水)、ついに『ギヴァー』のブッククラブの授業が終わりました! 10月から始め、途中にビブリオバトルの授業をはさむというイレギュラーな展開はありましたが、4回にわたってブッククラブの授業を行いました。ブッククラブを自分の授業に取り入れたのはこれが初めてです。どのようにしたら良いのか、なかなか具体的に分からなかったのですが、今夏に自分が経験したことによって、やり方が分かったとともに、その効果も確信できました。そこで、年度初めに予告していたシラバスを変更までして、ブッククラブを取り入れました。結果、大成功だったと言えるでしょう。学生たちがこんなにのめり込んで話し合ってくれるとは、ある程度予想してはいたものの、私の予想以上でした。彼らは次の授業を待ち焦がれるようになり、4回が終わった後も、「またやりたい!」「まだ話したい!」「別の本でもやりたい!」「残りの授業全てがブッククラブでもいい!」(^_^;) という意見をたくさん聞かせてくれました。
 これは『ギヴァー』を選んだことが大きな意味をもっていると思います。『ギヴァー』は、次から次へと謎が生まれてくる物語であり、話し合って解決するものもありますが、新たな謎の登場に、もう人に話したくてたまらなくなる物語です。これを選んだことが成功の第一理由でしょうね。
 学生たちの意見の抜粋です。彼らは実にいろいろな反応してくれているのが分かります。

  • みんながいろいろな疑問を持っていることが分かりました。友だちと話し合い、それらの疑問についても話し合うことができました。班の友だちと、ジョナスの父への不信感など、様々なことが共感できて良かったです。また、新たな疑問も浮かびました。双子が生まれ、体重が同じだった場合の「厄介」とはどういう意味かということです。まだ残る疑問がモヤモヤしてしまいます。終わり方について、最後にジョナスが見た光景がクリスマスの幸せなものであり、飢えていて意識も失いかけていた矢先のことだったため、死の瀬戸際だったのではないかという考えになりました。すごく後を引く終わり方だったので、話し合えてよかったです。
  • ブッククラブの質問一覧を見て、自分の中で疑問が増えてしまうものと「それはこうなんじゃないか?」と考えを共有してみたいものの2つに分かれ、やっぱりもう1度ギヴァーを読み直すべきなのかなと感じました。今日は、とにかく謎が深まってしまう回でした。誰かが一言発すると、「それはあ〜だ。いや違う。」とどんどん話が広がって発展し、結局疑問が増えてしまうという繰り返しになっていました。しかし1冊読み終わって感想や疑問を共有すると、こんなに話が広がるのかと気づけた良い機会になりました。ジョナスとゲイブリエルの最後はどうなるのか。フランダースの犬的な死を迎えるのか、生き残れるのか。記憶をジョナスに与えたギヴァーがコミュニティーに残って何ができるのか。共有の時間にも解決することはできませんでした。
  • 今日の初めに今までのギヴァーの話の質問を見ました。この本は最初から最後まで謎だらけだったなと思います。まだ未解決の謎もたくさんあり、もっともっとみんなで話して自分の中で納得して終わりたいという気持ちに駆られています!!! 最後まで読んで、謎のまま終わってしまったなという感じがしました。考えれば考えるほどわからなくて、ジョナスはコミュニティを出て何がしたかったのかがまだよくわかっていません。こんなに本を読んで悩んだのは初めてで、他の本でも話をしてみたいと思いました。他の班では全く違う疑問が上がって、そう言われればなんでだろうと新たなモヤモヤが生まれました。班の中で映画ではどんな風に描かれるのかみてみたいという話になり、今後見て見たいと思いました。
  • 今までのブッククラブの疑問を整理したものを改めてみると、話の進み方がよくわかりました。自分たちのグループでは出てこなかった面白い疑問もあって、なるほどなと思いました。とにかく話し合いに向いていた本だったなあと思いました。とうとうギヴァーが終わりました。最後まで謎が多くて話し合いも毎回盛り上がって楽しかったです。「最後の終わり方がスッキリしない」という意見が多かったけど、そこも様々な意見が生まれてよかったのではないかと思いました。読めば読むほど考えが深まる本だと思いました。他のグループでジョナスが脱出して、解放?されたのに、ソリの記憶があるのはなぜかという疑問が出て、なるほどなと思いました。記憶が放たれた後のコミュニティも気になりました。
  • 今日の振り返りの時に、多くの人がまたビブリオバトルをしたいと言っていましたが、私も全く同じ意見でした。あの後、また新しい本を読み始めたのですが、みんなに紹介したくてたまりません。ギヴァーの最後のシーンについて中心的に話し合いをしました。私は、小説を読み終わった後に映画も見たので、疑問が少しスッキリした感じがしました。映画も見た方がよりギヴァーの世界観が伝わったので、オススメです。それぞれがまだ自分自身の持っている疑問に対して完全にスッキリしている状態ではなかったです。4部作ということで、続きを読んでみたくなってきました。
  • 前の疑問の振り返りをやったが、今となっては(読み終わってみると)このことはこれ!と解決していたり、これとこれはつながってるんだと思ったり、たくさん発見がありました。まだよくわからないこともあったので、また読みたいです。たくさんつながることがあってびっくりした。私の意見では2人でコミュニティーを出て記憶のあるところに行ったのかなと思った(よそ=記憶のあるところ)。あと、ギヴァーの娘はジョナスの前のレシーバーのローズマリーだったのかもしれないというびっくりしたこともありました。結果的に終わりはよくわからなかったけど、とても面白かった。抜け出したと考えていたから、みんなお意見を聞いて死んでしまったのかもしれないのか、夢だったのか、なるほどと思えることがたくさんあり、不思議だなと思いました。川の謎もなるほど!と思えました。
  • 初めて最後まで読んだ時、「ここで終わりかあ」とついニヤついてしまいました。そしてジョナスの父親がすごく嫌いになりました。いくら子どもが好きだったとしても、このコニュニティには本当の愛情などないのだと思いました。小グループでは、やっぱり2人がどうなってしまったのかという話し合いになりました。歌声や音楽も実際にはなかったのだと思います。父親の言動についても「ひどい」という意見でした。死という概念がもうないのだなと感じました。もしも夢オチだったのであれば、それはそれでいいかなあと思いました。クリスマスの部分は聞いていてすごく納得ができました。ギヴァーの続編もぜひ読んでみたいです。
  • 他のグループで色がないとその国にいいことは?と話していたグループがいくつかあったと聞いて、確かに気になるなと思った。色がないと人種差別が起きず、戦争にもつながらないという意見に、このグループの人は深い話し合いをしていてレベルが高いなと感心しました。私たちも疑問だけではなく、このようなまた一歩上のレベルの話し合いができるといいなと思った。ついにギヴァー最終回が終わってしまいました。こんなにしっかりとした恋愛系以外の小説は久しぶりでした。終わってみて少し寂しい気持ちになりました。この本の中では何と言っても解放が死という意味を表していたことに衝撃を受けました。お父さんが双子の片方を「ばいばいでちゅねー」って注射針を刺して殺して捨てたのは残酷でした。お父さんに怖すぎて鳥肌が立ちました。それを見たジョナスの気持ちの考えたらかわいそうでなりません。他の班で、その後のコミュニティに様子が気になる、他のコミュニティに入っても、なぜジョナスはソリの記憶を持ち続けられたのかという意見に確かになぜだろうと疑問に思いました。この本は話し合えば話し合うほど疑問が生まれて、とても興味深かったです。この本をぜひ色々な人にオススメしたいです、まずは本好きな父に勧めたいと思います。
  • 先生は全てをわかっているものだと思ってしまっていましたが、自分たちと同じように謎に思うことがあるのだと気付きました。今日は今までよりたくさんのことをしゃべることができました。ギヴァーの終わり方があっさりしすぎていて、そのあとのことがとても気になりました。みんなに気づいているところが自分たちの話し合いに出てなくて、その考えもあるのか!!と驚きました。

 授業では、ミニレッスンとして今までの3回の授業で学生たちが挙げた質問を列挙して、彼らに示しました。そして、いくつかの質問は解決し、いくつかの質問はまだ残っていることを話しました。最後の学生の「先生は全てをわかっているものだと思ってしまっていました」とはそのことを指して言っています。私は、この授業を通して、「小説を読む」ということがどういうことなのかを少しは理解させることができたかな、と満足です。小説を読むとは、決して教師から答えを教えてもらうことではなく、教師も学生もなく、皆ともに作品に反応していくことなのだということです。
 RWの授業は、新潟市内のある中学校の先生方がご自分の授業の中で挑戦しています。これも、とても素敵な実践となっています。いずれご紹介したいと思います。