『ギヴァー』第13章〜第18章への反応

 先週11月26日、『ギヴァー』のブッククラブの授業の3回目を行いました。この回は、本文の第13章〜第18章を範囲とし、学生同士で自由に話し合わせています。そのふりかえりの一部から『ギヴァー』に関して触れている部分を引用します。

  • まず、今度双子が生まれるから、1人を解放しないといけないという内容について、どうして双子はだめなのか、と疑問に思いました。また、リリーにゾウの記憶を伝えようとしてもだめだったのに、ゲイブには楽しい記憶を伝えることができたので、ゲイブには記憶を受け取る力があって、この先の展開で重要なことにつながっていくのでは? と思いました。ゲイブに記憶を伝えてしまったということをギヴァーに知らせなくてよかったのか?という他グループの意見に対し、なるほどと思いました。話し合いとしては、読んでいない人もいて特定の人が話している状態だったので、次は皆が読んでくると面白いと思います。
  • 話し合いの中で周りの人に痛みがわかってもらえないことは辛い、など共感することがたくさんありました。ローズマリーをギヴァーは愛していたところで、恋ではなく、親が子に対しての愛情なんだと話し合いました。今日は、初めて、話し合いの中で意見を言えることができました。そこから話をだんだん展開することができ、とても良い話し合いでした。
  • このギヴァーの世界には愛という感情がないということで、それはどんな世界なのだろうと思いました。愛以外でもいろんな感情がなくて、ジョナスたちは何を思って生きていたのだろうと不思議に思いました。楽しくなさそうな世界だなと思いました。ジョナスは1人で痛みの経験や辛いことの経験をしていて、それでも、そのことは誰にも言えずに、辛いんだろうなと思いました。今回もみんなの意見を聞くことで話し合いが広がっていき楽しかったです。
  • これは、本を全く読まない私にとってとても理解するのに時間がかかるし、理解することができないところもありますが、読んでいく中で少しずつではあるが、本の内容を理解することができてきている気がしました。色のない、愛のない、そんな世界で、何が楽しくて生きているのかとても不思議に感じました。DVDではどう表現されているんだろう…? やはり、皆と話す中で「愛のない世界」ってどういうことなのだろう、と話し合いました。愛を知っているのはジョナスで、その周りの人たちは知らない。ジョナスは愛を知ることがいいことだと思うのか、知りたくなかったのか、どっちなのだろう…。
  • 解放とよそというのは違うのか、一緒なのかという疑問がありました。私のイメージだと、解放=死、よそ=違う国? なのかなと思いました。次の章からそれがわかるのかな?と思うと楽しみです。今日は、一人一人疑問や感想を言ってから、その人の意見について話しました。とても楽しかったです。
  • ギヴァーの中の世界がだんだんと分かるようになってきて、改めて、自由に生きることができないコミュニティだなと、思いました。確かに、安心・安全であり、争いごともないところはよいと思いましたが、機械的で嫌だなと思いました。今回は、ギヴァーの世界のことがよく分かるようになったため、それぞれ思ったことをたくさん話しました。けれども、やはり疑問はたくさんあったのでモヤモヤしました。物語の結末を早く話し合いたいと思いました。
  • あまり本を読まないのですが、『ギヴァー』は本当に毎回毎回続きが気になって、早く先を読みたくてうずうずしてしまうほど、ハマってしまいました。今日帰ったら、残りを読み切りたいと思っています。読書って一人で楽しむもの、と思っていましたが、同じ本を他の人たちと共有し話すことで、何倍も楽しめるんだなあと感じました。毎回ブッククラブが楽しみです! ずっとブッククラブがいいなあって思います。
  • 今日の授業では、自分の分からないところや、理解しきれなかったところをグループのメンバーがすごく分かりやすく教えてくれて、本当に助かりました。思わず、なるほどね! って感じになって、その疑問が解決したことで分かることが増えてよかったです。個人活動にも書いたように、共有の時間があってよかったと思う時間でした。今回の時間のように、次のギヴァーは最後の回なので、少しでもよい話し合いができるよう、しっかりと準備したいです。
  • 今日は、愛のことについてたくさん話をしました。ジョナスがフィオナに愛情を感じてしまっていて、大変なことなのではないかという話が出て、配偶者は決められてしまうのにジョナスはどうするのか気になりました。また、その気持ちを持ってしまったのは、薬をやめたせいだという意見が出ました。みんな、ジョナスが記憶を受け継いで、痛みを感じてもそれを他の人に分かってもらえないのは辛いといっていて、私もそう思いました。いろんな意見が出て、共感もできてよかったです。

 彼らのふりかえりを読んでいると、毎回、このリーディング・ワークショップの授業を始めてよかったな、と思います。高校までの12年間の学校教育を経て、未だに読書を苦手に感じる学生が一定数いるのです。私にとって、この発見はこの授業を行って得た大きなものの一つです。そして何より嬉しいのは、そうした学生たちが皆揃って、この授業を受けることで読書の面白さを少しずつでも味わうことができていることです。4番目や7番目の学生にとって、読書とは今まではそういうものだったのでしょう。しかし、この授業を通して、また今年はブッククラブの実践を通して、彼らも読書の楽しみを実際に味わっていることが本当に嬉しいです。
 また、このブッククラブの授業の中で、私は「優れた読み手が用いている方法」を何一つ教えていないにもかかわらず、学生たちが『ギヴァー』について話し合う中で自然にそれらの方法を用いていることも注目されます。私が3回の授業のミニレッスンで取り上げたのは次の内容です。

  1. よい話し合いをするための方法
  2. 本の読み方
  3. ビブリオバトルのやり方

 私がミニレッスンで心がけているのは、ブッククラブにおける学生たちの話し合いがスムーズに進むために役立つものを提供する、ということだけです。私がこれまでの授業でやっていることは、とにもかくにも学生たちの話し合いをいかによく進ませるか、ということです。「優れた読み手が用いている方法」は一度も紹介していません。でも、それも当然なのです。これらの方法のいくつかは、学生たちが無意識のうちにすでに用いているものもあります。『読む力はこうしてつける』では8つの方法が紹介されています。その8つ全てを用いる学生はなかなか出てこないけれども、そのうちの「質問する」「比較する」「何がくるか予測する」「推測する」などは通常の読書でも使っているものです。ブッククラブではこれらの方法の使用がさらに促進されている様子がうかがえます。
 これを実証的に、統計的にしっかりと計測したら面白そうですね。今回の授業の収穫として、期待できそうです。

「読む力」はこうしてつける

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