今年度の授業が終了した

 今日は特編Cの授業があった。3年生に対する最後の特編授業である。また、この授業で国語科が担当するのはこの1日分だけであり、よって、3年生に対する本当に最後の授業でもある。私が担当したのだが、これで私の2012年度の担当授業のすべてが終了した、ということになる。まあ、小論文の個別指導や相互問題の個別指導が断続的・突発的に持ち込まれるので、指導自体はまだ終わらないのだけれど、「授業」と名の付くものは終わった、ということだ。
 特編Cは東京大学の後期試験対策講座である。東大の後期試験は総合科目I〜IIIがあり、IIIは小論文形式の設問である。私はこの対策を担当した。過去問を見てみると、さすがに重厚な出題である。問題文自体はそれほど長くもなく、理解もそう難しいものではないのだが、その設問がすごい。昨年の問題ではワイマール共和国の歴史的経緯について500字で述べさせる、というものがあった。そして、芸術作品に対する国家権力の介入と利用の問題点について、問題文にある例とは別の例を用いて論じさせている。これが第1問。さらに第2問があり、第1問と同程度の難易度のものが続く。その2問を120分間で解答させている。いやはや、これは過酷である。完答できる受験生はおそらくいないだろう。どの程度善戦できるか、そして、どのように自らの論を展開できるかが争われることになると思う。
 これに対する対策を考えることも難しい。対策講座は100分×2コマなのだが、その限られた時間の中で内容の面にまで踏み込んで解説・演習することは無理だろうと判断した。そこで、自らの考えを立てるための発想の仕方と、それをどのように論を展開するかという表現の方法に絞って生徒に伝えることにした。
 最初に、問題に対応するための発想の仕方を説明し、実際に演習させた。その際に参考にしたのが、先日も紹介した下記の資料である。

東大生・医者・弁護士になれる人の思考法 (ちくまプリマー新書)

東大生・医者・弁護士になれる人の思考法 (ちくまプリマー新書)

ここに示されている「限界事例」を用い、AともBともとれる事例において、ある判断をどう論理的に評価するか、ということを実際に試させた。その上で、過去問の1つを用いて演習させた。そして、生徒が書いたその解答案をお互いに相互批評させ、他者の考えを知らせるとともに、自らの発想の強化を図った。
 次に、上記の2012年度の第1問を用いて、実際に生徒に解答をさせた。その際、「芸術作品に対する国家権力の介入と利用の問題点」を論述させるための実例の案をいくつか示し、それを用いて解答を作成しても良いこととした。70分間の演習の後、生徒同士で各自の解答案を相互批評させた。その際、この設問に対する解答に必要な論の展開の仕方、含むべき要素について説明し、それらがちゃんと含んでいるかどうかで互いの解答を評価させた。
 時間的にはこれで限界である。本当は、生徒の解答を用いて、実際に検討・評価し、改善例を示すと良いのだろうと思った。だが、時間的な余裕がなかったので、生徒同士の相互批評で代えた。参考になってくれれば、と思う。
 参加者は7名だった。彼らが相互批評している際に話す内容をそばで聞いていたが、私が解説しようと思っていたないようではないものの、なるほどと思わせる意見がけっこう出ていて、互いの批評活動はそれなりに機能していたのではないかと思う。
 さて、これで今年度の授業のすべてが終わった。まだまだ楽にはならないが、またしても大きな区切りを迎えた。しばし、その感慨に浸ろう。