『源氏物語』の「御法」巻を読む

 前期夏期講習4日目。今日のテクストは『源氏物語』の「御法」巻と杜甫漢詩に対する鑑賞文2編を組み合わせたもの。どちらも非常に気合いの入った文章で、実に素晴らしい。やはり文章がよいとこちらの気合いも入るし、設問も良いものになる。今日の問題は歯ごたえがあって、素晴らしいものだ。講習は、まあそのせいもあって、「御法」巻だけしか扱えなかった。今日の漢文は見逃せないので、明日やろう。
 しかもこの「御法」巻は古典の教科書に載っているテクストを完全に含んでいる。そう、紫の上の死の場面である。紫の上と光源氏と明石の中宮がそれぞれ和歌を詠み交わし、その直後に紫の上の容態が悪化して、数々の誦法も空しく、露が消えるように「消えはてたまへり」となるところだ。『あさきゆめみし』のこの場面での描写も素晴らしいが、そこに描かれるように誦法が行われないのではなく、行われた後に、紫の上は無くなっているのだね。視覚表現を伴ったメディアの影響力は恐ろしい。まあ、それでも『あさきゆめみし』は私が源氏物語を理解する上で必須のアイテムではあるが。もちろん、原文の素晴らしさは知っていますよ。
 それにしても、この場面がこうまで「露」のイメージを元にして舞台設定を行っているとは、今回改めて気づいた。春を好む人はやはり萩のうわ露が消えるように、秋の季節とともに消えてゆくのだねぇ。紫式部の美意識の素晴らしさに改めて舌を巻く。
 そうしたことに言及しつつ、講習では敬語の復習を徹底させた。敬語を見分け、その種類を確認していくことで、文の主語が確定できることを説明し、演習させた。それを踏まえて選択肢を選ぶことができるし、選んだ選択肢からこの文章の場面理解がより進む。センター形式の問題は、確かに5つの選択肢の中から選ぶという無味乾燥な解答方式だが、一方で解答者をより容易に文章内容の高みにまで連れて行ってくれる。夏休みの学習がスタートしたこの時期にはやはり相応しい課題だと言える。
 さて、明日はいよいよ前期の最終日。古文10・漢文10に加えて、漢文9も説明しよう。漢文10よりも句法がたくさん出てきて、何より漢詩を扱った問題の練習になるからね。