「明石の君の苦悩」を追体験させる
今日の授業は古典講読と古典。それぞれ1コマずつ。
古典講読は昨日の考察を踏まえ、ちょっと大がかりな仕掛けを考えて実行した。まずは本文(第一学習社『古典講読』・「源氏物語:明石の君の苦悩」)を音読させる。その後、以下のことを示して、明石の君の苦悩を追体験させた。
明石の君はこの文章において二者択一を迫られている。我が子、明石の姫君を光源氏に渡すか、自らの手元に置き続けるか、の二つである。それぞれには以下の条件が付いている。それを板書して生徒に示し、自分が明石の君ならどちらを選択するか考えさせた。
【姫君を光源氏に渡す】
【姫君を自分の手元に置き続ける】
この2つを黒板に左右に分けて板書し、生徒には明石の君の立場に立ってどちらを選択するか考えさせた。その上で、4人ずつのグループを組ませ、グループとしての選択をまとめるよう指示した。実は、残り時間が余りなくて、これを考えさせるのをたった5分間しか取れなかった。人生の一大事の選択を5分間でせよというのはあまりに無謀だが、仕方がない。
選択させた結果を聞いてみた。何と8対1で「姫君を渡す」方を選択したグループが多かった。でも、生徒は十分に悩み、そして娘の将来のために自らの気持ちを殺す、という明石の君と同じ判断をしたわけだ。いやぁ、大したものだ。そして、面白い授業ができた。
たった5分間ではあったが、その分集中した話し合いができたようだった。「え〜、かわいそう〜」とかいう声を出しながら、それでも様々に考えてくれた。思いつきにしては面白い授業だった。
次の古典でも同様のことをしかけたのだが、こちらは明確に二者択一の状況に生徒を追い込むことができず、話し合いもあまり活発にならなかった。こちらは残念。
そんな中、とうとう『海辺のカフカ』を読み終えた。
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この小説を「癒し」で受け止めるものが多いそうだが、今回はそうは思わなかったなぁ。これは相変わらず重いものを読者に投げ掛ける小説だ。確かに田村カフカ君は日常に戻っていくが、彼を取り巻く状況はあまり変わりはしない。意志なき暴力は相変わらず世界を覆い尽くしている。その中で、佐伯さんから遺された絵を頼りに、彼は歩んでいくのだろう。
システムに覆い尽くされた世界に「卵」はいかに立ち向かっていくか、やはりそのテーマは変わらないのではないか。