「舞姫」の授業:第4段落の読み取り2

 今日の授業は1コマのみ。文系の現代文である。このクラスは、昨日「舞姫」の第3段落が読み終わったところで授業が終わっていたので、今日は第4段落の初めから読み取りを行う。試験日程も近づいてきて、今日を入れて残り時間はあと2コマ。さてはて、説明しきれるかな。
 昨日も一部を載せたが、私が第4段落で設定している質問は次の5つである。

1.豊太郎が日曜日の朝なのに「心は楽しからず。」となるのは何故か?
2.鏡に映った正装した豊太郎の姿を見て、エリスが「我をばな捨てたまひそ。」と不安になるのは何故か?
3.相沢の忠告を聞いて、豊太郎がエリスとの「情縁を断たん」と約束したのは何故か?
4.豊太郎が明視した「我が地位」とはどのようなものか?
5.ロシアから帰ってきた豊太郎がエリスの部屋に入り、白い木綿と襁褓を見て「驚いた」のは何故か?

 予定では4番目まで説明するつもりだったのだが、残念ながらその説明の途中で終わってしまった。
 1と2については昨日の別のクラスとほぼ同じ経過を辿った。私が説明を始める前に、生徒に隣同士で考えてみるように促したところ、特に2番目では、ある生徒が「鏡には豊太郎とエリスの2人の姿が映っていたんだよ。」と話をしているのが聞こえてきて、非常に嬉しく思った。それぞれの発問に対する生徒の意見も、それぞれ的を射たもので大変良かった。私の説明は、彼らの意見の方向性のまま、そこに肉付けや理由付けをすることになった。
 3については、まず相沢謙吉の忠告についてその内容を整理した。相沢は2つの意見を述べている。まず、今回の原因は豊太郎の弱い性格によることだから仕方がないこと。次に、有能・有用な人物は国家の役に立つべきであること。それ故に、豊太郎は帰国して立身出世の道に戻るべきだと彼は主張している。そして、それを実現するために2つの方策を提案している。1つは自身の能力を示して天方伯の信用を得ること。もう1つは、エリスは相応しい相手ではないので、彼女と別れるべきこと、である。豊太郎はそれを「大洋に舵を失いつる舟人がはるかなる山を望む」と表現している。帰郷の念捨てがたかく、しかし具体的な方策を持つ術もなかった豊太郎はついに「はるかなる山」として目標を得たのである。そして、そのことにプラスして彼自身の優柔不断な性格が働き、「この情縁を断たん」と約束してしまうのである。生徒はもちろん、豊太郎の優柔不断さを示す箇所を的確に指摘してくれた。ただし、そこには暗中模索の状態だった豊太郎に一筋のかすかな光が差し込んできていた状況だったことも十分に考慮に入れるべきだと思う。
 4については説明の途中で終わってしまった。残念至極。要するに、エリスの彼への愛情と天方伯からの厚い信用との間に板挟みになった、豊太郎のダブル・バインドの状態を理解して欲しいわけだ。そこで、まずはエリスからの手紙の内容を検討する。彼女は20日余りの豊太郎との別離によって、かえって彼への自身の愛の深さを確認してしまったのだ。そして、母を親戚に預けて、自分は豊太郎とずっと一緒に日本までもついて行くと決意したのである。つまり、彼女は故国を捨てる覚悟を極めたのだ。豊太郎がずっと帰国の願いを捨てきれなかったのとは対照的に。ここを説明しようとして時間切れだった。
 はてさて、あと1時間で豊太郎はドイツを出発できるのかなぁ。

DVD『コクリコ坂から

 私にとって別格の存在となったこの「コクリコ坂から」のDVDがついに発売された。私などの年代では、この映画の世界と内容はびんびん共感し、没入してしまうのではないだろうか。だが、他の同年代者よりも、私はおそらくこの作品に惚れ込んでいるだろう。
 私は自他共に認めるジブリアニメファンだが、その中でもはや順位など付けられない別格な存在の作品がある。今までそれは3作品あった(「未来少年コナン」、「風の谷のナウシカ」、「ルパン三世カリオストロの城」)のだが、この「コクリコ坂から」はそれらをも飛び越えて最上級の別格作品となるのではないか。それほどに、私はこの作品に入れ込んでいる。
 DVDが発売され、再びこの作品を観ることができる。楽しみである。