話し合いによる「舞姫」の授業2:他の作品と関連づける」


 話し合いによる「舞姫」の授業の2時間目、今日のテーマは「他の作品と関連づける」である。
 今日扱うのは「舞姫」の第3段落、豊太郎がエリスと出会う場面である。豊太郎とエリスとは始め「師弟の交はり」から始まった。それが、豊太郎の免官騒ぎの中でエリスと「つひに離れ難き仲」になってしまったわけだ。こうした二人の関係について、他の作品で似たようなシチュエーションを持つものを想起し、「舞姫」と関連づけようというわけだ。この他の作品を関連づけ、その類似点や相違点を比較することで、「舞姫」の独自性をより良く理解することができるし、逆に「舞姫」が決して孤立した作品ではなくて、他とのつながりを持っている作品なのだということも理解できる。
 そこで、今日のミニ・レッスンはこの「他の作品と関連づける」ことをやりやすくするために、「舞姫」と他の作品との比較表を用意した。そして、まず生徒たちに他の作品としてどんなものが思いつくか考えさせ、グループで話し合わせた。ところが、こちらの予想していたよりはあまり話が進まない。どうやら他の作品をそう簡単には思いつかないようだ。それはそうだろう。今まで、こうした方法を日本の国語教育の中ではあまり扱ってこなかったのだから。彼らも突然の要求で、驚いたのだろう。しかし、私が「源氏物語」の光源氏と紫の上の関係と似ているのではないか、と例を出してみると、次第に様々な発想が浮かんできたようだ。
 そこで、もうここからは話し合い作業に突入させた。模造紙を配り、マジックペンを渡して、どんどん話し合いをするよう促した。あるクラスのあるグループが「この話は禁断の恋なんじゃないか」という発言をしていたので、私はクラス全体にそれを知らせたりした。他にも話し合いの停滞しているグループには、彼らの出した意見について肯定したり、助言したり、いろいろと話し合いが促進するよう努めた。その結果、様々な作品が「舞姫」と関連づけられた。「源氏物語」「アベラーズとエロイーズ」「千と千尋の神隠し」「こころ」「月曜9時台のドラマ」などなどである。しかし、このクラスで一番多かった作品は「ロミオとジュリエット」であった。
 そこで、振り返りの時間ではあえて集中した「ロミオとジュリエット」と比較した3グループに発表させた。そして、彼らの発表の中から、そのグループが独自に発見したことをクラス全体に返してやったりした。なかなか面白い話し合いができた。
 一方、もう1つのクラスでは意外に話が進まなかった。昨日はむしろこのクラスの方が活発に話し合いをしていたので、今日も期待していた。だが、部活動の公欠などで8人ほどが欠席していたせいもあって、なかなか他の作品を思いつくのに苦労したグループが多かった。話し合いの中に入って助言をしたり、先に終えていた上記のクラスの模造紙を見せたりして、なんとか話し合いが動いたところで時間切れ。このクラスでは「ベルサイユのばら」や「もののけ姫」と比較しようとしたグループが出てきた。
 この「他の作品と関連づける」ことはもっと十分な時間が必要なのかもしれない。あるいは何度も練習する機会を与えるべきか。話の進まなかったクラスの生徒は、他の作品を思いつけないというより、様々な作品を思いついて、グループとして共通の話題となる作品に絞り込めない、という悩みをしていたようだった。これは話し合いで読む場合の欠点と言えるものかもしれない。
 さて、残りもう1時間。どんなミニ・レッスンにするか思案中である。と同時に、土日に行われる全国大学国語教育学会での発表もこなさなければ。忙しい土日である。