来年度の教科書教材を読む

 シラバス作成のために、来年度の現代文で使用する教科書の教材文を読んでいる。教科書はある意味では良質のアンソロジーである。現代日本の様々な分野・話題が一望できる。結構面白い。
 だが一方で、もうこの話題は古いだろう、と思うような評論教材も少なくない。特にIT関連を扱った教材は、発表された当時は強い問題提起性を持っていたのだろうが、現在の状況を踏まえると、「もうこの論議は古いよね」と思うものがある。
 特に古いと感じるのが、ITの発達によりありとあらゆる情報を手に入れることができるようになったが、その情報の洪水の中で判断力が失われてしまっている、とする主旨のものだ。これは梅田望夫の論によって決定的に古いものとなったと思う。つまり、「グーグル以前」と「グーグル以後」によってITの世界は区分けされた、とするものだ。「Web2.0」の考えである。グーグルの登場によって、我々は情報の洪水の中で立ち往生している、という図式が通用しなくなった。玉石混淆の情報洪水の中から真に有用な情報だけを抽出しうる技術が確立したのだ。よって、Web2.0以降の時代では、もはや情報洪水の中で進むべき道を失っているのではない。一つの指針を手に入れているのである。
 他の分野ではその論旨が時代遅れだと思う評論はそう多くない。論理構造がしっかりしているかどうかを基準に考えている。だが、IT論だけはダメだ。特に2000年以前のものは、たとえ論理構造がしっかりしていても、時代遅れだと思う。生徒には現代でもその輝きを失っていない文章を読ませたい。