『こころ』読解の授業

 3組での授業。昨日は9組であった。採点はまだ終わらないため、どちらも授業をする。『こころ』の最終節、第14節の読解を行う。試験前までは「私」がKの自殺したのを発見し、「もう取り返しがつかないという黒い光が……私の全生涯を照らした」という部分に手をかけておいて終わっていた。そこから確認を始める。
 まずは「私の全生涯を照らした」ということについて確認する。これはファシリテーション・グラフィックを用いた話し合いの3回目のテーマである。生徒が話し合ったことを確認することになる。「私」の現在とは、Kへの罪悪感と劣等感がKの死によって永遠に固定されてしまったことを確認する。未来とは、その思いをずっと抱えたまま生きていくことである。また、そのためにお嬢さん(=妻)との間に齟齬を来していくことも確認する。そして過去とは、自分が叔父と同じように悪人であったことを自覚し、人間不信に陥っていくことを確認した。
 その後でKの遺書について考えていく。Kが何故お嬢さんのことを「わざと回避した」のかを、「私」がどう解釈したかということと、Kの思いは何だったのかとを解釈する。そして、「墨の余りで書き添えた」ことの意味を問う。「墨の余り」で書く内容とはどのようなものか、生徒に話し合わせ、聞いてみた。生徒は「書くつもりのないこと」と答えてくれた。OK! 素晴らしい。やはりそう読めるよね。私は今回の授業でいろいろ考えさせたことはほとんどある本からの受け売りである。でも、ちゃんと論点を示してやれば、生徒はその本と同じ結論に到達するのだということが分かる。やはり、どこに着目するのか、が問題なのだよね。

「こころ」の読み方指導 (教材研究の定説化)

「こころ」の読み方指導 (教材研究の定説化)

 そして、「もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう」がKの本音であることを確認し、ファシリテーション・グラフィックによる話し合いの2回目のテーマであった、「もっと早く死ぬべき」だったのはいつのことなのかを、5点ほどこちらで挙げて、生徒に話し合わせた上、一人2回までで手を挙げさせた。

  1. Kが自分の理想の人生が破綻していたことに気付いたとき(「ばかだ」「僕はばかだ」)
  2. Kがお嬢さんへの恋に陥り、第一心情が貫けなくなったとき(「私」に恋の相談をしたとき)
  3. Kがお嬢さんを好きになったとき
  4. Kが「私」の下宿にやってきたとき
  5. Kが実家・養家から見放され、生活に困窮したとき

手を挙げさせた結果は、1、2が20名前後とやはり多かった。3〜5は数名程度であり、5には4名が手を挙げた。私は、これには「正答」はないと考えている。むしろ、自分の中で何を重要視するかによってこの答えは変わるものだろうと思う。最初、9組では一人1回手を挙げるようにと要求していたのだが、生徒が困ったような顔をしたので、一人2回までに変更した。その通りだろう。私もどれか1つといわれたら困ってしまう。この結果は生徒の考えそのままの通りでよいとした。
 最後にKの「血潮」が襖にほとばしっていた件について考えを述べた。「私」に自分のことを理解して欲しいという思いの表れだ、と解釈した。この辺りは時間がもう過ぎてしまっていて、早足だった。
 やれやれ。計画ではこれを30分くらいで終えて、その後、最後のまとめを書いてもらおうと思っていたのだが、これは次回の作業になるかな。