『こころ』読解の授業

 3組と8組での授業があった。8組はKの「覚悟」の場面と、Kによる2回目の襖開けの場面とを扱った。襖開けの所はやはり生徒が活発に意見を交わすようになるね。一種の推理ゲームだからね。
 3組は試験前最後の授業であった。そしていよいよ最終節、Kの自殺の場面にさしかかった。残念ながら全部を終えることはできなかったが。まず、「私」がKが自分とお嬢さんとの婚約を知った時の「最も落ち着いた驚き」を聞いた時、どのように理解したかを確認する。その後で、今までの解釈の流れからKはどのような驚きを迎えていたかを推察する。それらを踏まえて、Kが自殺の決意をしたのがこの「私」とお嬢さんとの婚約を知った時だろうと示しておく。何しろ自分がぐずぐず悩んでいたがために「私」の裏切りを引き起こしてしまうのだからね。よって、Kは衝動的に「土曜の晩」に自殺したのではないことを確認する。その後で、「私」がともかくも待とうと考えたのが「土曜の晩」だった理由を推論する。
 そして、Kが何故「土曜の晩」に自殺したのかを推論させた。最終節の要の質問である。生徒は「「私」がぐっすり寝ていて、気付かれることなく自殺を決行できるから」と答えてくれた。素晴らしい! これはKの2回目の襖開けの場面からの連想も入っているだろう。2回目の襖開けの際、Kは「私」の熟睡度を確かめていたのだ。そして、「私」が眠っている間に自分のしようとしていることを決行できるかどうか確かめていた、と示しておいたのだ。おそらくこの生徒はこの時の学習内容を覚えていて、この新しい場面での解釈に活かしたのだろう。そのように、既有知識を活かして新しい場面での推論を進めることができるのだなぁ。こういう瞬間に立ち会えると、嬉しいなぁ。
 その後で、他の考えられる理由をいくつか示し、Kの自殺が極めて計画的なものであったことを説明した。そして、3回目の襖開けの意味についても示した。そのあたりで時間切れであった。残念! せめて「黒い光」が「全生涯」を照らすところまでは行きたかったなぁ。試験が終わった後にまとめをやろう。