『獣の奏者 完結編』

獣の奏者 (4)完結編

獣の奏者 (4)完結編

 今回はじっくりと読んだ。そして、前回初めて読んだ時には気づかなかったいくつかの点に気づいた(ネタばれです。未読の方、注意!)。
 ジェシが狂った王獣と闘蛇たちの最中で音無し笛を吹こうとして、その意図にエリンが気づいて、代わりに行うわけだが、そのジェシの行動が「残った人々」から教えられたものであることにようやく気づいた。以前は、ジェシがとっさに取った行動かと思っていたのだが、今回じっくり読んで、「残った人々」がエサルやジェシに大災厄の正体とその解決法を伝えていたのだ、ということがわかった。
 そして、前回の大災厄を収束させた人の名前が「リョザ」であるという。それならば、エリンは新たな「リョザ」の始祖になった、とも言えるのかもしれない。だが、当然最初の「リョザ」も狂乱する王獣たちの最中で音無し笛を吹いたわけで、ならば彼もそのために命を落としたことだろう。エリンは4日間とはいえ、命をつなぐことができた。それはイアルの献身的な救出行動によるわけだ。
 ふーむ。今回は結末を知っているせいか、ずっと落ち着いて読めたなぁ。何しろ前回はエリンが死んだことにショックを受け、しばらくは何も考えられなかったものね。今回は落ち着いていた分、読み落としていたことに気づくことができたのだろう。